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【資産運用の視点】アクティブETFの発展
特定の指標に連動しないアクティブ運用のETF(以下、アクティブ ETF)の取り扱いが9月に東京証券取引所で始まった。ETFではない投資信託と比較して、ETF は「市場での日中売買が可能(成行・指値注文も可能)」、「(一般的に)信託報酬や購入時手数料が安い」、「保有銘柄が日次開示される」というメリットがある。 アクティブETFの取り扱いが先行している米国市場では、2023年9月末でアクティブETF の総資産額は4,347億ドルでETF 全体の6.5%に過ぎない。しかし、5年前と比較して約3.36倍に拡大しており、成長率ではパッシブETF(同期間で約1.85倍)を上回っている。今後日本においても、アクティブETFは拡大していくものと思われる。以下、アクティブETFにまつわる話題を2つ取り上げる。 ① アクティブETF への参入障壁ETF の「基準価額」をリアルタイムで正確に算出するために、「保有銘柄情報の日次開示」が課されている。しかし、ファンドマネージャー独自の銘柄選択や運用戦略が模倣される懸念が生じ、運用会社の参入障壁となっている。この問題に対応するため、非・半透明型ETFという手法が米国市場に登場した。マーケット・メイクを行う特定機関にだけ保有明細の全部もしくは一部を開示することで、リアルタイムでの売買を可能にしている。しかし、上場する際のハードルが高く(非開示や一部開示に関して規制当局の承認が必要)、資産規模はまだ小さい。このように、アクティブETFはまだ黎明期とも言える状況にあるが、今後、障壁の解決が進み、市場規模が更に拡大する余地が残されているとも言える。 ② テーマ型アクティブETFテクノロジーやエネルギーなど特定のテーマに関連する企業に投資するETFが近年注目を浴びている。投資家が特定のテーマに興味や関心を持っている場合、投資意図が理解しやすいことが背景と思われる。注意すべき点として、「特定のテーマに投資が集中してしまうと、価格変動が大きくなること」、「テーマの注目度が低くなった場合、取引量が低下し、流動性が低くなること」等があり、投資する際はテーマの持続性や成長性にも注目し、リスクの分散や流動性に気を付ける必要がある。 (野村ファンド・リサーチ・アンド・テクノロジー 樋渡 靖一郎) ※野村週報 2023年11月27日号「資産運用」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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【市場展望】2023~25年度の日本経済見通し
潜在成長率を上回る景気回復へ 7~9月期GDP(国内総生産)統計(1次速報)の発表を踏まえ、野村では日本経済の見通しを改定した。改定に当たり、ドル円レートは23年度末140円、24年度末130円、25年度末130円、原油価格(北海ブレント)は23年度末85.2ドル(バレル当たり、以下同)、24年度末79.3ドル、25年度末76.8ドルとの前提を置いた。 改定後の見通しにおける実質GDP 成長率は、23年度が前年度比+1.4%(23年9月8日時点の前回見通し:同+1.8%)、24年度は同+0.5%(同+0.4%)、25年度は同+1.0%(同+1.0%)である。 野村では、23年度に入って低迷していた民間内需が今後、持ち直してくると見込んでいる。①実質雇用者報酬の緩やかな増加、②岸田政権による給付金、所得税・住民税の定額減税、③人手不足を背景とする省力化投資やデジタル化投資の促進、④米国経済の早期の後退リスクの低下などを材料として、23年10~12月期以降、振れを伴いながらも、潜在成長率(年率0.5%程度)を上回る景気回復が実現しよう。 コアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)に基づくインフレ率は、23年度が前年度比+2.8%(23年9月8日時点の前回見通し:同+2.8%)、24年度は同+1.7%(同+1.7%)、25年度は同+1.6%(同+1.2%)と予想する。 食料価格によるCPI インフレ率の押し上げ効果は、24年半ばにはほぼ消滅しよう。 一方、潜在成長率を超える景気回復が23年10~12月期以降に見込まれることから、需給ギャップ(実際のGDP と潜在GDPの乖離)は需要超過(実際のGDP が潜在GDP を上回る)の度合いを強めそうだ。加えて、今回の需給ギャップは人手不足の色合いが濃く、今後の賃上げ圧力を強める要因と位置付けられる。野村では、24年、25年の春闘においていずれも3.9%(定期昇給を含む)と、23年(3.6%)を上回る賃上げ率を見込む。こうした環境において、より基調的な物価変動を反映するコアコアCPI(酒類以外の食料・エネルギーを除く)で評価したインフレ率は24年半ば以降、前年比+1%台後半で安定するとみる。コアCPI インフレ率が下がる中でも、インフレの粘着性は徐々に高まるだろう。 金融政策シナリオを変更 今回の経済見通しの改定を経て、野村では金融政策のシナリオを変更した。これまでのメイン・シナリオでは、YCC(長短金利操作)の撤廃を24年10~12月期、マイナス付利の撤廃を25年以降としていたが、新たなメインシナリオ(確率60%)では、YCCの撤廃を24年4~6月期(4月を有力視)、マイナス付利の撤廃を24年7~9月期以降(同年7~9月期を有力視)に、それぞれ前倒しする。また、日銀のフォワード・ガイダンスについては、「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」という文言がYCC 撤廃と同時に削除されると見込む。 一方、インフレ率が持続的・安定的に2%を超えるような経済環境(需要や賃金の伸び)の定着を想定しがたい中、野村では引き続きプラス金利政策や量的引き締めは想定しない。オーバーシュート型コミットメント(コアCPI の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという日銀のコミットメント)も据え置かれると、野村では予想する。 上述したメイン・シナリオに対して、2つのリスク・シナリオを想定している。リスク・シナリオA(確率30%)では、①賃金・物価の好循環が想定よりも早く実現する、あるいは、②賃金ではなく、為替や金利など市場環境に配慮する形で、半ばなし崩し的に、日銀が2%インフレの持続性・安定性を確認する、などを前提として、24年3月までのYCC撤廃、24年6月までのマイナス付利撤廃を見込む。 リスク・シナリオB(確率10%)では、景気の鈍化、物価・賃金上昇の持続性喪失を前提に、YCCの撤廃は25年以降、マイナス付利の撤廃は26年以降にずれ込む。 GDPデフレーターの上昇に見られるように、足元にかけてインフレの「国産化」がじりじりと進んでいる。次に問われるのは、日銀もその重要性を強調する「賃金・物価の好循環」である。 2%インフレの実現を目指している日銀にとって、なぜ単なる物価上昇ではなく、賃金・物価の好循環が求められるのだろうか。それは、日銀の目指すところが、ただインフレを醸成することではなく、インフレの「原因」を日本経済に根付かせることにあるからだ。 賃金・物価の好循環は、インフレの原因が日本経済に根付いたかを評価する材料として、今後も金融政策運営の適否を判断する際の軸を提供する。 (野村證券経済調査部 森田 京平) ※野村週報 2023年11月27日号「焦点」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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昨日 19:00
【野村の投資判断】年内は大型株優位の展開が続くか
高ROE、輸出、大型株の3ファクターが株高を牽引 TOPIX(東証株価指数)は、年初来高値の更新をうかがう水準にありますが、その突破にはさらなる株高材料が必要となるでしょう。米国の年末商戦に関しては、モノ消費が好調ならグローバル製造業にとって追い風となる可能性がありますが、サービス消費が過度に強い場合は賃金インフレの再加速に対する懸念が生じかねない点には留意が必要です。 日本株の物色動向を見ると、2023年の5月から6月にかけての株高ラリー局面と似た傾向が見受けられます。すなわち、「高ROE(自己資本利益率)」、「輸出」、「大型株」の3つのファクター(要因)が市場を牽引しています。日本銀行の金融政策決定会合や企業の決算発表を経て、海外投資家による日本株買いが本格化している点も同様です。2023年11月に入ってからは、CTA(商品投資顧問)による先物の買いが目立ちますが、11月第3週には現物株の買い越しも3,630億円に達し、10月第2週の4,558億円以来の高水準となるなど、拡大傾向が見られます。 現在、アジアの投資家から野村證券のストラテジーチームに対して、東証の「要請」やNISA(少額投資非課税制度)の仕組みといった基本的な問い合わせが増加しています。来年に向けて、アジア地域内でのリスク分散を目的とした日本株の購入が検討されている可能性があるでしょう。年内は、個人投資家が新NISAの開始を待って様子見となる可能性もあるため、大型株優位の相場展開が続くと見ています。 (FINTOS!編集部) 要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 注目点とトピック(2023年11月24日配信)」(プレミアムプラン限定) (注)画像はイメージ。 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点