「脱炭素」に向けた取り組みが世界で加速する中で、アンモニアの燃料利用が注目を集め始めた。燃焼させてもCO2(二酸化炭素)を排出しない性質に加え、従来から肥料や工業用に広く利用されてきたことから輸送や貯蔵の技術が確立されていることもメリットとして挙げられている。

 日本では、温室効果ガス排出量の約85%がエネルギー起源であり、特に電力分野での「脱炭素」は喫緊の課題である。

 こうした中、日本のアンモニア燃料利用技術開発が加速している。2014年には、産業技術総合研究所が世界に先んじてアンモニア燃料によるガスタービン発電を実現させている。また近年では、石炭火力発電でもアンモニアの混焼に成功するなど、世界的にもアンモニアの利用で先行している。

 アンモニアは燃焼すると有害物質であるNOx(窒素酸化物)を発生させる。そのため、燃焼効率の向上や脱硝装置の性能向上が必要不可欠となる。また、発電コストも20%の混焼で石炭と比べ約20%上昇するとされ、コストの抑制も大きな課題である。

 しかし、こうした課題にも日本企業は積極的に取り組んでいる。IHI は液体アンモニアと天然ガスの混焼技術を開発し、混焼率70%での安定燃焼とNOx 発生量の抑制に成功し、25年を目途にアンモニア専焼ガスタービンの商用化を目指している。三菱重工業も21年3月に世界最大級となるアンモニア専焼のガスタービンシステムの開発を始めたと発表し、実用化に向け動き始めた。

 アンモニアがより効率的に社会で使われるようになるためには、燃料アンモニア市場の形成や国際的な取引ルール作成などインフラ作りも重要となる。インフラ構築面でも技術力で先行する日本のイニシアティブ(率先)を期待したい。

(寺田 絢子)

※野村週報2021年5月17日号「投資の参考」より

【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら
ご投資にあたっての注意点