日本:2023年4-6月期決算レビュー

4-6月期は良好な着地

2023年4-6月期決算がほぼ出そろいました。ラッセル野村Large Cap(除く金融)は事前の市場コンセンサスでは、前年同期比4.5%増収、同12.1%経常減益が見込まれていましたが、同8.5%増収、同9.6%経常増益と大きく上振れて着地した模様です。

個別企業レベルで見ても、67%の企業で事前のコンセンサス予想(経常利益ベース)に対して上振れて着地しており、ここ数四半期の50%台半ばの上振れ比率と比較すると際立って高くなっています。  

日本企業の増益率はコロナ禍からのV字回復一巡後は徐々に経常増益率が縮小してきましたが、今回の決算ではその流れに歯止めがかかりました。

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自動車やSBGの増益寄与が大きいが

業種別では、①いよいよ挽回生産が本格化した自動車や、②投資事業の大幅な赤字が縮小したソフトバンクグループ、③燃料費高騰や円安で悪化していた損益が大きく回復した公益(電力)などの増益寄与が大きくなっています。

ただ、全体への寄与額は小さいものの、機械(鉱山機械)、サービス、ソフトウエア、(海運を除く)運輸、など内外需問わず幅広い業種が増益寄与しているのも今回の特徴と言えるでしょう。  

また、鉄鋼・非鉄や商社など市況産業の多くでは減益寄与となったものの、事前コンセンサス程には減益幅が大きくならなかった企業が多く存在します。これは、期初想定よりも円安で推移したことや、遅れていた原材料価格の製品価格への転嫁が進行したことなどにより、交易条件が改善したことが背景にある、とみられます。

会社見通しの修正は平年並み

このように4-6月期決算は好調だったものの、(株価に対してインパクトの強い)会社側の通期業績見通しの修正数はほぼ平年並みです。

これは、企業が将来に対して神経質になっているというよりも、2023年度の残存期間がまだ3四半期分を残しているという季節的な理由によるものと考えられます。例年、企業をとりまく事業環境の良し悪しにかかわらず、中間決算シーズン以降にならないと会社側の通期業績見通しの修正件数は増加していません。

そうした中でも、挽回生産が本格化している自動車や、人流の回復による恩恵が顕著な小売りや運輸、燃料費や原材料費などコスト増の価格転嫁が順調に進んだ鉄鋼・非鉄、公益などで上方修正企業が多くなっています。

他方、電機・精密や機械など中国経済との連動性が高い業種では上方修正の動きは緩やかです。

下方修正局面から脱却した公算が

2023年4-6月期決算を受け、アナリストによる通期業績予想の見直しも進んでいます。ラッセル野村Large Cap(除く金融)の2023年度の予想経常増益率は、2023年6月1日時点の前年同期比+4.2%から、直近では同+6.3%にまで上方修正となっています。

ラッセル野村Large Cap(除く金融)の2023年度予想経常利益は、2022年3月をピークに5四半期連続で下方修正が続いてきましたが、今回ようやく上方修正局面に復帰した公算が大きくなってきています。  

業種グループでみてもほぼすべての業種グループで、①リビジョン・インデックスがプラス(上方修正が優勢)、あるいは②リビジョン・インデックスのマイナス幅が縮小しています。中国経済に連動性の高い一部のサブセクターを除けば、業績モメンタムの改善は広い範囲に及んでいます。

(野村證券投資情報部 伊藤 高志)

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