不透明感強まる中、9月は堅調維持

9月の前月比は+0.7%

10月17日に米商務省が、2023年9月の小売売上高を発表しました。小売売上高(合計)は前月比+0.7%となり、ロイター集計による市場予想の同+0.3%を上回りました。8月については、前月に発表された速報値の前月比+0.6%から同+0.8%に上方修正されました。

業種別では、インターネット小売を含む無店舗販売が前月比+1.1%となったほか、自動車・同部品が同+1.0%、飲食店が同+0.9 % 、化粧品を含む健康用品が同+0.8%などとなりました。

一方、電気製品が同-0.8%、衣料品が同-0.8%となりました。

GDP(国内総生産)の算出に用いられる、コントロールグループと呼ばれる自動車や建材、ガソリンスタンド、食品を除いたコア小売売上高は、9月は前月比+0.6%でした。8月分は、速報値の同+0.1%から同+0.2%に小幅に上方修正されました。

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9月の前年同月比は+3.8%

9月の小売売上高(合計)の前年同月比は+3.8%と、8月改定値の同+2.9%から伸び率が加速しました。8月は、前月の発表時点の同+2.5%から上方修正されました。

業種別では、飲食店が前年同月比+9.2%、無店舗販売が同+8.4%、化粧品を含む健康用品が同+8.3%、自動車・同部品が同+6.2%などとなっています。

一方、家具が同-5.9%、百貨店が同-4.7%、建設資材・ガーデニング用品が同-4.0%、電気製品が同-2.2%、など、裁量的な品目の比重が高い業種の多くで減少しています。ガソリンスタンドは同-3.5%となっていますが、前年と比べたガソリン価格の下落が影響していると推察されます。

前年同月比で拡大基調が続く

小売売上高(合計)の前年同月比の推移をみると、9月は+3.8%と、8月改定値の同+2.9%よりも増加ペースが加速しています。

無店舗販売は、8月改定値の同+7.9%に対し9月は同+8.4%と、こちらも伸び率が加速しています。

ミシガン大学消費者マインド調査

10月13日に発表されたミシガン大学消費者マインド調査の10月速報値は63.0と、9月確報値の68.1から悪化しました。

一方、併せて発表された消費者期待インフレ率調査では、1年先は9月確報値の3.2%から3.8%に、5年先については同じく2.8%から3.0%に上昇しました。

今後の留意点

9月小売売上高は、前月比が市場予想を上回り、前年同月比の伸び率が加速しており、金利高やインフレの影響は受けながらも、足元の米国の個人消費は底堅さを維持していると見受けられます。

小売売上高の中で唯一のサービス業である飲食店は、前月比、前年同月比共に増加しています。個人消費の向け先が、財に対する支出からサービス関連の支出にシフトしていて、財中心の小売売上高から受ける印象よりも、個人消費は堅調である可能性も考えられます。

一方で、ミシガン大学の調査では、消費者は経済の先行きに対しマインドが低下している上、インフレへの警戒感が強いことが窺えました。

なお、小売売上高統計は名目値で、支出額の増加がインフレによって押し上げられている可能性もあり、この点には注意が必要です。

また、小売企業の業績動向を見る上では、小売売上高統計は売上高についての統計である点にも留意が必要です。企業によっては、売上高は増加しているものの、仕入価格の上昇や人件費上昇の影響で、利益が圧迫されているということも考えられます。

いずれにせよ、単月の動向では個人消費の傾向は判断できません。他の経済指標などとも併せて、米国個人消費の状況を確認していきたいと考えます。

(野村證券投資情報部 村山 誠)

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