中東情勢の緊迫化

ハマスとイスラエルの衝突

10月7日に始まったイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘による犠牲者の多さや戦力の規模は、第4次中東戦争以来となっています。今後、米国や中東周辺国を巻き込む形で紛争が拡大することが懸念されています。

2国の共存を目指す協議が停滞

1947年、パレスチナをイスラエル人国家とアラブ人国家、国連管理地区に分割するパレスチナ分割決議が国連で採択され、1948年にイスラエルが独立を宣言しました。しかし、アラブ諸国はこれを受け入れず、数次にわたり戦争が繰り返されました。特に、1973年の第4次中東戦争の際に起きた石油危機は、原油価格急騰という、世界的に大きな影響を引き起こしました。1993年にパレスチナが暫定的に自治を始めるオスロ合意が結ばれ、2国家共存の機運が高まりましたが、その後のイスラム組織ハマス、イスラエルでの右派政権の台頭などで対立は先鋭化し、イスラエル軍のガザ侵攻などで和平協議は停滞しました。

ハマスによる攻撃の背景は

アラブ諸国は、パレスチナ問題を巡りイスラエルと対立を続けてきましたが、安全保障や経済面での協力を進めるため、次々と国交を樹立しました。今回のハマスによる攻撃は、米国の仲介で、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化に向けた交渉が本格化している中で行われました。ハマスはこの国交正常化阻止を狙ったと考えられるほか、パレスチナ問題が国際社会から置き去りにされることを懸念しての行動との見方もあります。

原油価格への影響は限定的か

第4次中東戦争では、アラブ諸国がイスラエルを支援する西側諸国への制裁として、原油価格の引き上げを行い、石油危機を招きました。今回の攻撃は、中東産油国を巻き込むような構図ではありません。また、ガザ地区は産油地帯ではなく、石油の重要な輸送路ではないため、現時点で原油相場に与える影響は限定的となっています。

(野村證券投資情報部 澤田 麻希)

【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら

業種分類、Nomura21 Globalについて

ご投資にあたっての注意点