※画像はイメージです。

日本:2025年1-3月期決算レビュー

2025年度期初会社側見通しまとまる

2024年度の決算実績がほぼ出揃いました。2024年度はほぼ事前予想通りの着地となりましたが、市場の関心はトランプ政権の関税政策の影響が年度を通して表れる可能性が高い2025年度見通しに向けられていたと思われます。

また、不透明な先行きを理由に期初会社側見通しを非開示とする企業が多数にのぼることも危惧されていました。実際、東日本大震災の際には25%、コロナ禍の際には実に64%の会社が期初の見通しを非開示としたため、株式市場ではボラティリティーが顕著に上昇しました。今回は、結果的に非開示とした企業は、歴史的な平均よりもむしろ低い4%にとどまり、株式市場に安心感をもたらしたと見られます。

さて、2025年度の現時点での会社側見通しは前年度比-8.5%の経常減益となっています。トランプ政権の関税政策の影響がどの程度織り込まれているのか気になるところです。過去においては、リーマンショック、コロナ禍など期初時点では想定外の事象が起きた場合には実績値が期初見通しを下回っていますが、逆に期初時点で想定されていた事象についてはある程度織り込まれている、と考えてよいでしょう。

※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。

(注1)赤線は、ラッセル野村Large Cap(除く金融)の期初時点(各年5月末)での会社側経常増減益率見通し。会社側見通しが未発表/非公表の企業は、野村予想、あるいは東洋経済予想で補完している。直近値は2025年度で2025年5月19日時点。
(注2)灰色線は各年度の実績経常増益率。2024年度以降の数値は2025年5月19日時点での野村證券市場戦略リサーチ部による推定・予想値。
(出所)野村證券投資情報部作成

アナリスト予想は大幅下方修正

期初会社側見通しが減益予想だったこともあり、アナリストによる予想利益の下方修正が本格化しました。

下方修正の主な要因は、業績予想に際しての為替前提の変更(従来150円/米ドル⇒現在140円/米ドル)、および一部業種でのトランプ政権による関税政策の影響の織り込み、などが挙げられます。その結果、ラッセル野村Large Cap(除く金融)の2025~2026年度予想経常利益は2025年3月時点の予想に比べて5兆円前後のかなり大きな下方修正となっています。

(注)ラッセル野村Large Cap(除く金融)の予想経常利益額の推移。直近は2025年5月19日。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成

一部でトランプ関税の織り込み始まる

2025年3月以降、アナリストによる2025年度予想経常利益は大きく下方修正されています。このうち、際立って下方修正額が大きい業種が、自動車、電機・精密です。いずれもトランプ政権による関税政策の影響を主に織り込んだ結果です。

一方、そのほかの業種の修正額は僅少です。トランプ政権の関税政策の直接的な影響は主に自動車、電機・精密など限定的な業種・企業にまず及びますが、その他の業種・企業への間接的な影響については現時点で業績予想に織り込む難易度が極めて高いため、修正額がわずかとなった、と考えられます。

仮に、今後、トランプ政権の関税政策が、(高い関税率の状態で)長期間に及んだ場合、影響は自動車、電機・精密に留まらず、鉄鋼や化学、海運などに間接的な影響となって顕在化する可能性があります。さらに、直接・間接的な影響が積み重なって、実体経済の減速にまでつながると現在は無関係と思われている、内需・非製造業の業種に影響が及ぶ可能性もないとはいえません。今後も、自動車、電機・精密以外の業種に影響が拡がることがないか、注視する必要があるでしょう。

(注)ラッセル野村Large Capを構成する19業種の、2025年3月3日~2025年5月19日の間の、2025年度予想経常利益修正額。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成

RIが加速度的に悪化する可能性は低い

2025年3月以降、トランプ政権の関税政策の業績予想への織り込みが始まった結果、リビジョン・インデックス(RI)も急激に悪化しています。2025年5月19日の段階で、ラッセル野村Large Cap(除く金融)のRIは-44%と極めて大きなマイナスとなっています。2025年3月時点の+3.2%から劇的と言ってもよい悪化です。

少なくとも2012年度以降、RIがプラス圏から、いきなり-30%以下となったことはありません。なお、一旦、RIが-30%を下回ると、それ以上マイナス幅が拡がることはありませんでした。RIがプラスに復帰するには時間がかかる可能性がありますが、経験則上は更なる悪化の可能性は低いでしょう。

(注)赤線はラッセル野村Large Cap(除く金融)のリビジョン・インデックス(四半期)。灰色線は、ラッセル野村Large Cap(除く金融)の予想経常増益率(前年度比)。2024年度および2025年度は2025年5月19日時点の集計値。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成

(野村證券投資情報部 伊藤 高志)

ご投資にあたっての注意点