
(注)画像はイメージです。
海外市場の振り返り
20日の米国市場は、通商政策に対する不確実性と地政学的リスクに対する警戒感から動意に欠ける展開となりました。S&P500は18日の終値を割り込んだ水準で一進一退となり、トランプ政権が半導体の対中規制を強化するとの報道を受けて半導体関連株が下落したこともあり、S&P500、ナスダック総合ともに小幅安で引けました。米ドル円相場は取引時間の終盤にかけて強含み、5月中旬以来となる146円台で引けています。
相場の注目点
米国のトランプ大統領は6月21日(日本時間22日午前)、米軍がイラン国内3ヶ所の核施設を空爆したと発表しました。米国政府は19日時点では、「トランプ米大統領はイランを攻撃するか2週間以内に決定を下す」としていたため、このタイミングでの軍事介入は市場にとってもサプライズであったと見られ、市場の初期反応としては原油高、株安、米ドル高となることが想定されます。トランプ大統領は更なる軍事攻撃も辞さないとする一方で、イランに対して事前に核施設の破壊のみが目的であり、「体制転換を計画していない」と伝えていたとの報道もあります。このため、米国は戦闘を拡大・長期化させることは意図していないと推察されます。今後はイランの反撃とイスラエルの出方が注目されます。イランが石油関連設備や港湾施設を破壊する、ホルムズ海峡を事実上封鎖するといった事態に発展すれば、エネルギー価格の高騰を通じて、世界経済や株価に悪影響を与えることが想定されます。また、イスラエルがイランの核開発能力を完全に排除するまで戦闘を終結させないといった強硬姿勢を続ければ、戦闘が長期化する可能性があります。ただし、今回のケースでは戦火が中東以外の地域に飛び火する可能性は限定的です。過去の例を見ても、地域が限定された地政学リスクの悪影響を市場は短期間で概ね消化しています。当面は事態の進展を注視する必要がありますが、過度に悲観視する必要はないと考えられます。
(野村證券 投資情報部 尾畑 秀一)


(注)データは日本時間2025年6月23日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。