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2025年9月16-17日に開催されたFOMCでは、市場予想通り0.25%ポイント(pt)の利下げが決定されました。足元で雇用関連統計の減速が鮮明化し、市場では利下げ期待が高まっていました。25年9月に入り、米10年国債利回りが一時4%を下回り、米主要株価3指数が史上最高値を更新するなど、利下げの織り込みが進んでいました。

今回の9月FOMCで公表された「経済見通し」によれば、政策金利見通し、いわゆる「ドッツ」に変化が見られました。25年末の政策金利見通しの中央値は3.625%で、前回25年6月時点の同3.875%から0.25%pt下方修正されました。1会合における利下げ幅を0.25%ptとすれば今回も含めて25年内は3回、利下げをする想定になり、6月FOMC時点の2回から1回増えています。26年末見通しは同3.375%で、6月FOMC時点の同3.625%から0.25%pt下方修正されています。26年は1回の利下げの想定で、6月時点から変わらずとなっています。

FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は「雇用に関する下振れリスクが高まり、リスクバランスが変化した。市場を肯定しているわけではないが、(利下げが)1回だけの行動というわけではない」と述べています。利下げの主因が雇用市場の悪化であり、追加利下げの可能性を示唆しています。失業率上昇の目安となる雇用の伸びについて、パウエルFRB議長は「ゼロ~月+5万人のどこかと言えるかもしれないが、正解は分からない。ただ、数ヶ月前は月+15万人~+20万人だったものが、大幅に鈍化していることは明確だ」と述べています。

経済見通しで注目すべき点は、インフレ予測が上方修正された点です。25年は従来予想が据え置かれましたが、PCE(個人消費支出)デフレーター、コアPCEデフレーターとも26年は上方修正されました。従って、FRBのスタンスは「雇用悪化に対応するための予防的利下げは講ずるが、インフレには引き続き注意」と推察されます。足元のインフレ関連の指標は概ね市場予想通りとはなっていますが、徐々に加速しています。米セントルイス連銀のムサレム総裁は「関税のインフレへの影響は向こう2、3四半期にわたって経済全体に波及していく」と述べ、同連銀によれば25年7月時点における関税の価格転嫁率は20%にとどまっていると分析しています。

一方、会合後の記者会見において、パウエルFRB議長は「労働力需要は弱まっているが、移民の減少と労働参加率の低下を反映し、雇用の伸びは著しく鈍化した」と指摘しています。米国の雇用者のうち、米国外で生まれた者の比率は25年3月時点で19.8%でしたが、その後徐々に低下しています。移民労働力の減少がひいては労働力の供給制約、賃金の上昇につながるリスクも意識すべきでしょう。

FOMCの経済見通し(2025年9月)

(注)FOMCは2025年9月16-17日に開催。予想の中央値。実質GDP成長率及び2つの物価指標は各年10-12月期の前年比。失業率は民間部門の各年10-12月期平均。コアPCEデフレーターは価格変動の激しい食品とエネルギーを省いたもの。政策金利はFF(フェデラル・ファンド)レートのレンジの中央値で、各年末値。
(出所)FRBより野村證券投資情報部作成

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