米国の2022年1-3月期決算発表が4月半ばから本格化します。本稿執筆時点(4月8日)ではウクライナ紛争は終結しておらず、インフレとともに企業業績に対する不透明感の要因となっています。

 一方で、3月の後半に決算発表を行った米国小売企業の業績は堅調でした。米国大手レストランチェーンが決算資料で示した店舗ごとの売上高は、2022年1月はオミクロン株の感染急拡大で落ち込んだものの、2月には回復しました。3月の状況も良いことから同社は3-5月期の売上高は2月と同様の高水準が継続するとの見通しを発表しました。

 また、同様に3月後半に決算発表を行った米国内で約400店舗を運営する自動車の洗車チェーンは、2月24日以降のウクライナ紛争を受けてもビジネス状況が非常に堅調で、好調を3-5月期の業績見通しに反映させたとコメントしました。

 下図のように、ミシガン大学消費者態度指数の2022年3月速報値はインフレやウクライナ紛争を理由にコロナ禍以降で最も低くなりました。同指数はミシガン大学が景気や雇用、所得についてのアンケート調査を指数化したもので、GDPの7割を占める個人消費との相関が高いことで知られていますが、現在は米国小売売上高とは「ワニの口」のように乖離しています。小売売上高は名目値で、2020年3月から2022年3月の間に消費者物価指数が11.4%上昇したことを考慮しても乖離は大きいといえるでしょう。

 一方で、株価やGDPの約2割を占める企業投資と相関の高いISM製造業指数は、3月は57.1%と、コロナ禍後のピークを付けた2021年5月の61.6%からは低下傾向であるものの、景気の拡大・縮小の分水嶺である50%を上回っています。

 3月に決算発表を行った米メモリー半導体メーカーは、従来の設備投資額の見通しを維持し、半導体生産の米国移転を促進させるための設備投資減税などを含む法案(CHIPS、FABS※注)も成立後に利用予定であることを発表しました。

 インフレが懸念される現状では、米国議会がビルド・バック・ベター(より良き再建)法案(BBBA)を大規模な形で成立させることは期待しにくい状況です。一方で、中間選挙を控え有権者の景況感が悪化しているなかで、半導体のように米国での生産支援や、喫緊の課題である気候変動関連に的を絞った財政による対策を行う気運が高まる可能性はありそうです。

(注)CHIPSは、The Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors for America Actの略。FABSは、The Facilitating American-Built Semiconductors Actの略。

(注)データは月次。小売売上高は全品目、季節調整済の名目値で、直近値は2022年3月。ミシガン大学消費者態度指数は直近値は2022年4月。
(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成

【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら

業種分類、Nomura21 Globalについて

ご投資にあたっての注意点