日本:2022年1-3月期決算レビュー

上振れ着地となった1-3月期決算

 2022年1-3月期の決算発表がほぼ終了しました。ラッセル野村Large Cap(除く金融)の1-3月期業績は、(前年同期比16.7%経常減益となりました(5月18日時点)。ただ、大幅な赤字となったソフトバンクグループ(SBG)を除くと、同+23%と経常増益を維持しました。

 また、事前の市場コンセンサスが同7.8%増収、同7.3%経常減益でしたので、売上、利益ともに事前コンセンサスを大きく上回る結果となりました。

 今回は、ウクライナ情勢やエネルギー価格高騰など業績を取り巻く環境の不透明感がとりわけ強く、2022年2月ごろよりアナリストによる業績修正がほとんど行われないまま、決算シーズンを迎えることになりました。そのため、(資源価格の想定以上の上昇と相俟って)事前コンセンサスに対して実績値が大きく上振れて着地したものと考えられます。

非製造業が意外に健闘したが

 業種レベルでは、まず資源価格上昇が企業業績に色濃く影響を与えていることが確認されました。化学、鉄鋼・非鉄、商社などの増益寄与が突出して大きくなっています。反対に、食品や建設などでは、資材・原料価格の上昇を転嫁できずに減益に沈みました。

 また、今回の決算ではコロナ禍から経済活動が正常化に向かう中で、小売りやサービス、運輸など多くの内需・非製造業に属する業種が全体の増益に寄与しています。これらの業種はこれまで、外需型製造業がいち早く増益基調に定着する中で、業績の回復が遅れていました。業績モメンタムの観点からは今回の決算シーズンでもっとも活躍したグループと言えるでしょう。ただ、製造業の多くがすでにコロナ禍前のピーク利益水準を更新しているのに対し、これら内需・非製造業の多くはコロナ禍前の利益水準には及ばない業種がほとんどです。

2022年度の2桁増益予想は維持された

 通期ベースでは2021年度はやはりSBGの赤字決算の影響が大きく、34.5%経常増益と、事前予想をやや下回って着地しました。ただ、SBGの影響がなければ、下図にあるとおり40%を超える増益率で着地していたとみられます。

 今後の株価にとって、より影響の大きい2022年度の見通しですが、ラッセル野村Large Cap(除く金融)の実額ベースでは決算シーズン前の予想である52.88兆円から2.6%程度下方修正となっていますが、前年度比の伸び率では+11.9%とほとんど変化はありませんでした。またこの時期、アナリスト予想以上に市場に対する影響が強い会社側の新年度予想も+5.6%となっています。

円安の2022年度業績への影響は? 

 今回は、円安(米ドル高)の業績への影響も注目ポイントの1つでした。会社側の2022年度の米ドル円前提は、構成比で40%を超える企業が120円/米ドルとしています(野村證券の業績予想前提も同じ120円/米ドルです)。120円/米ドルに次いで、多いのが115円/米ドルの前提を採用している企業で、現状の為替水準に比較すると保守的な為替前提を設定している企業がいつになく多い印象です。

 ラッセル野村Large Cap(除く金融)の経常利益は1円/米ドルの円安で0.4%程度利益が増加します。現状の130円/米ドルが2022年度を通じて維持されるかどうかは不透明ですが、向こう数ヶ月間でも120円/米ドルよりも円安で推移すれば、現状の利益予想に対して数%程度の上乗せは期待できそうです。

 ただ、下表にあるとおり日本企業の業績に対しては、(鉱工業)生産の動向が圧倒的に大きな影響力を持っています。2022年度の業績の方向性は、自動車を中心とした挽回生産本格化の時期と、その程度により決まると考えられます。

(投資情報部 伊藤 高志)

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