企業業績は拡大が予想されている

 野村では、米国の実質GDP(国内総生産)成長率は、2021年の前年比+5.7%に続き、22年は同+2.5%と引き続き潜在成長率を上回る高い成長率を予想するが、23年には同+1.3%と減速を予想する。

 野村では、FRB(米連邦準備理事会)の政策金利は22年については6月、7月、9月に0.50%ポイントずつ、その後は11月、12月に0.25%ポイントずつ引き上げられ、利上げ幅は3月、5月分を含め合計2.75%ポイントと予想する。23年については2月、3月、5月、6月に0.25%ポイントずつ引き上げられ、合計で1.00%ポイント引き上げられると予想する。今回の利上げサイクルでは、最終的には3.75~4.00%で利上げを終了すると予想している。

 野村では、米長期金利(米10年国債利回り)は、米国経済が回復するのに伴い緩やかに上昇し、22年末は3.10%程度と予想する。その後、23年春から年央にかけては3.15%程度まで上昇するが、その後は米国経済が鈍化することに伴い低下し、23年末には3.05%程度と予想する。

 次に企業業績であるが、調査会社リフィニティブによる5月27日時点の集計では、S&P500指数構成企業のEPS(1株当たり利益)は、22年は前年度比+9.6%の228.03ドル、23年は同+9.2%の248.96ドル、24年は同+7.0%の266.40ドルと予想されている。

 米国企業は独自の技術力やビジネスモデルでグローバルに競争力を発揮し業容を拡大している企業が多い。景気が回復し拡大に向かう中で、22年以降も史上最高益を更新していくと予想されている。

 足元インフレに鎮静化の兆しがみられるが、まだ予断を許さない状況だ。このため、今後の金融政策にも不透明感が残り、株式市場は不安定となっている。しかし、6月FOMC(米連邦公開市場委員会)会合後に示されるFRB の経済予測やFOMC 参加者の今後の政策金利見通しなどを通して、今後の金融政策の経路や着地点が見通せるようになれば、不透明感が後退しよう。

 今後、米長期金利が上昇するとしても、3%をやや超える水準であれば、米企業業績の拡大を織り込み、米国株式市場は緩やかながらも上昇基調へ復帰しよう。

構造的に成長していく企業群に着目

 米国株式の銘柄選別の視点としては、独自の技術力やビジネスモデルで構造的に成長していくことが期待できる企業群の、中長期的な株価上昇に着目したい。

 一例として、ネットワークセキュリティー企業のフォーティネットが挙げられる。同社は独自に開発したプロセッサーやソフトウェアを組み込んだアプライアンス(セキュリティー用途に特化した機器)などを通じ、広範なセキュリティー・ネットワーク機能をユーザー企業に提供している。

 セキュリティー企業からは、企業のシステム管理者に付与される権限等を管理する、特権アクセス管理ソフトウェアを主力とするサイバーアーク・ソフトウェアも挙げたい。サイバー攻撃手法の巧妙化に加え、内部者による犯行への備えから特権管理の重要性は高まっており利用企業数を増やしている。

 もう一つの分野としては、企業向けに営業力の強化や、業務効率を改善させるためのソフトウェアを展開する企業群に注目したい。売上高で世界最大のソフトウェア企業であるマイクロソフトや、顧客関係管理ソフトウェア大手のセールスフォース・ドットコム、人工知能や機械学習を駆使して企業や人材に関する正確性の高い情報をユーザー企業に提供するズームインフォ・テクノロジーズなどを挙げたい。

 世界最大の検索エンジン「グーグル」を展開し、積極的に新技術に投資するアルファベットも挙げたい。

 カード決済ネットワークにも着目したい。コロナ禍の影響で実店舗でのカード利用減少の影響を受けてきたが、コロナへの対応で世界的に電子決済化の流れは加速しており、同分野最大手のビザを挙げたい。

 また、総合娯楽企業のウォルト・ディズニーも注目される。TV放送やストリーミング配信、映画・TV コンテンツ、テーマパークなどの事業拡大に加え、メタバース(仮想空間)、NFT(非代替性トークン)など新技術の活用で業績の成長が期待される。

 それぞれの分野で競争力を発揮し、着実な業容拡大で長期間増配を続ける優良企業も紹介したい。過去25年以上増配を継続している企業で構成される「S&P500配当貴族指数」採用で、かつNY ダウ指数の構成銘柄でもある企業は、シェブロン、スリーエム、キャタピラー、マクドナルド、プロクター・アンド・ギャンブル、コカ・コーラ、ウォルマート、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、ジョンソン・エンド・ジョンソン、IBM 等である。

(投資情報部 村山 誠)

※野村週報 2022年6月6日号「焦点」より

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