金融のフェーズ

(注)Web3は、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を用いたウェブサービスで、読み方は「ウェブスリー」。DeFiは、ブロックチェーン技術を用いた金融サービスであり、Decentralized Financeの略、読み方は「ディファイ」。スクエア(現ブロック)は、2018年1月31日にビットコインの売買サービスを同社の「Cash App」アプリで開始。テスラは2021年2月に製品のビットコインの支払い受け入れを開始し、同年5月に、ビットコインが電力を消費するため地球温暖化対策に逆行する、との理由で停止。データは日次で、直近値は2022年8月20日時点。
(出所)セントルイス連銀、ブルームバーグ、各種資料より野村證券投資情報部作成

 ブロックチェーン技術を基盤とした次世代サービスは、Web3(ウェブスリー)と呼ばれます。このうち、デジタル金融サービスであるDeFi(ディファイ)が重要な局面を迎えています。DeFiは、Decentralized Finance(デ・セントラライズド・ファイナンス)の略で、日本語では、ブロックチェーンが分散型台帳と呼ばれることから、分散型金融と呼ばれています。DeFiは、ビットコインに代表される暗号資産や、貸借、証券、保険などの一部でサービスが始まっています。
 決済や金融サービスを手がけるアメリカのブロック社は、2018年からビットコインの取引サービスを行っていますが、2022年4−6月期に暗号資産のビットコイン関連の純収益が前年同期比で34%減少したことを報告しました。また、電気自動車大手のテスラは、2021年に同社製品のビットコインでの受け入れを行いましたが、2022年4−6月期に保有していたビットコインのうち約75%を売却し、損失を計上しました。
 暗号資産の価格下落の理由は様々ですが、米連邦準備理事会の金融引き締めに加え、2022年4月時点で暗号資産の時価総額で3番目だったテラUSDの価格が5月以降に9割超下落したことが挙げられます。テラUSDは、本来はドルに連動した価格変動の少ない暗号資産、すなわちステーブルコインでしたが、大量の解約などにより連動できない状況になりました。

国際機関の対応の推移

(出所)各国際機関資料より野村證券投資情報部作成

 国際機関は以前からステーブルコインを含むDeFiのリスクを指摘していましたが、対応を加速させています。主要25か国の金融当局や、国際機関で構成される金融安定理事会は、2018年に暗号資産の市場と、将来の金融安定性についてのレポートを発行していました。
 FSBのメンバーである国際通貨基金や国際決済銀行などもレポートで、DeFiの問題点を洗い出し、DeFiの利点を既存の金融の枠組みに追加するための提案を行っています。
 今後の注目点としては、FSBによる、10月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議での、暗号資産・市場に対する規制・監督について提案や、国際決済銀行による年内の暗号資産の分類決定が注目されます。
 上の1つ目の図では、DeFiのフェーズは、黎明期から、流行期を経て、現在は幻滅期と考えられます。
 現在は、回復期や安定期に移行するために必要な、伝統的資産のトークン化や、犯罪対策がなされた安全な形で効率良く取引される基盤、厳しい規制の掛かっている機関投資家から規模の大きい資金が流入する仕組み、などの整備を国際機関が推進する、重要な局面といえそうです。

(野村證券投資情報部 竹綱 宏行)

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