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昨日 12:01
【今週のチャート分析】NYダウ連騰記録が示す超長期上昇トレンド
※画像はイメージです。 ※2025年5月8日(木)引け後の情報に基づき作成しています。 日経平均株価:37000円に迫る、過去の保ち合いレンジ下限が視野に 5月7・8日の日経平均株価は、5月2日までの7連騰で大幅上昇していたこともあり、短期的な過熱感が意識され、上値の重い展開となりました。 チャート面からこれまでの動きを振り返ってみましょう。4月7日に一時30,792円まで下落しましたが、米国の関税政策の一部修正を受けて大幅反発となりました。①4月25日に昨年12月高値から今年4月安値までの下落幅に対する半値戻し(35,595円)に到達し、②5月2日には同61.8%戻し(36,728円)を達成しました(図1)。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注1)直近値は2025年5月8日時点。(注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 この先の上値メドとして、図2の③75日線(5月8日:37,109円)や、④200日線(同:37,960円)の水準が挙げられます。また、⑤昨年10月から今年2月にかけて長期間保ち合ったレンジ(37,700~40,300円)の下限が視野に入ってきました。同レンジでは、累積売買代金が多いとみられ、戻り待ちの売り圧力が強まり上値が抑えられやすいとみられます。 (注1)直近値は2025年5月8日時点。(注2)トレンドラインには主観が入っておりますのでご留意ください。(出所)日本経済新聞社データより野村證券投資情報部作成 一方で、25日線からの乖離率やRSIは短期的な過熱感を示唆しています。上昇一巡後に再度調整となった場合は、図3中の⑥横ばいに転じた25日線(5月8日:34,727円)や、⑦4月中旬に保ち合った34,000円台の水準が下支えとなるかどうかが注目です。 (注1)直近値は2025年5月8日時点。(出所)日本経済新聞社データより野村證券投資情報部作成 NYダウ連騰記録が示す超長期上昇トレンド NYダウは、関税交渉進展への期待から値を戻し、5月2日にかけて9連騰となりました。しかし、戻しは5月7日時点で上値抵抗線である75・200日移動平均線以下の水準に留まっています。今後、関税引き上げによる経済の悪化が鮮明になってきた場合、再度調整に入る可能性を考慮しておくべきだと言えます。 ただ、過去の連騰記録と超長期トレンドの関係からみれば、10年超の超長期上昇トレンドが一時的な調整を吸収する可能性が高いとみられます(図4)。 (注1)直近値は2025年5月7日。(出所)S&P ダウジョーンズ・インデックス社より野村證券投資情報部作成 では連騰記録はどのような局面で多く見られるのでしょうか(図5)。2009年以降の上昇局面では、今回を含めて8回みられましたが、 2000~09年の長期株価低迷期をみると、一時的に株価が上昇する局面はあったものの、一度も9連騰は達成できませんでした。 一方で、1982年からの超長期上昇局面では5回みられています。連騰記録からみれば、現在超長期上昇トレンドを形成中だと考えられます(図6)。 (注1)直近値は2025年5月7日。(出所)S&P ダウジョーンズ・インデックス社より野村證券投資情報部作成 (注1)近値は2025年5月7日。(注2)トレンドラインには主観が含まれていますのでご留意下さい。(注3)日柄は両橋含む。(出所)S&P ダウジョーンズ・インデックス社より野村證券投資情報部作成 一つ前の超長期上昇局面である、1982年半ばから2000年にかけての上昇は、上昇期間が約17年半となり、上昇倍率は15倍を超えました。今回は15年半で約7倍の上昇倍率に留まっています(図7)。 今後も様々なショックを乗り越えて、さらなる上昇となる可能性が高いと考えられます。 (注1)直近値は2025年5月7日。(注2)トレンドラインには主観が含まれていますのでご留意下さい。(注3)日柄は両橋含む。(出所)S&P ダウジョーンズ・インデックス社より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 岩本 竜太郎) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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昨日 08:19
【野村の朝解説】貿易協議進展期待から米株は続伸(5/9)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 8日の米国市場では貿易協議進展への期待から市場のリスクセンチメントが改善し、株式市場では主要3指数が揃って続伸、米ドルは円やスイスフランを中心に主要通貨に対して上昇しました。米ドル円相場は146円前後まで円安が進行しています。トランプ大統領は英国との貿易協定で合意したことを発表、米国は英国からの輸入品に対する10%の基本税率を維持するものの、品目別の追加関税を引き下げる一方、英国は米製品に対する関税率を5.1%から1.8%に引き下げる模様です。トランプ大統領は、中国に対しても交渉が順調に進めば関税を引き下げることを検討し得ると述べました。 相場の注目点 目先最大の注目点は、今週スイスで予定されている米中貿易交渉です。トランプ大統領はこれまで中国に対する厳しい姿勢を維持してきたことから交渉は難航するとの見方が有力でしたが、現在145%の対中関税を50%程度まで引き下げることを検討しているとの報道もあり、市場の期待が高まっています。今週はEUとも協議が予定されています。EUは8日、米国との交渉に失敗した場合、追加関税を950億ユーロ規模に拡大する計画を明らかにしました。 金融政策面では、FRBは5月FOMCで予想通り3会合連続で政策金利を据え置き、パウエルFRB議長は予防的利下げには慎重な姿勢を示しました。今後も、金融政策運営は経済指標を見極めながら判断する状況が続きます。 本日のイベント 本日はウィリアムズNY連銀総裁はじめ、複数のFRB高官の講演が予定されています。今後の政策運営を巡って、FRB内のコンセンサスを探る上で良い機会になりそうです。 (野村證券 投資情報部 尾畑 秀一) (注)データは日本時間2025年5月9日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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05/08 16:21
【野村の夕解説】日経平均反発も、貿易交渉を巡って方向感を欠く展開に(5/8)
(注)画像はイメージです。 本日の動き トランプ米政権が7日、バイデン前政権によるAI半導体輸出規制強化の撤回を発表したことを受けて、米半導体株が上昇しました。この流れを引き継いで、国内半導体関連株がけん引役となり、日経平均株価は寄り付き直後に前日比178円高の36,957円まで上昇しました。しかし、米中対立長期化への懸念が市場の重石となり、間もなく下落に転じました。ただ、10時過ぎに、トランプ米大統領が自身のSNSで、日本時間8日23時に「大国との主要な貿易合意」の発表を予告したことが報じられると、日経平均株価は再度上昇に転じるなど、方向感に欠ける展開となりました。午後に入り、時間外取引での米国10年債利回りの上昇を背景とした円安進行を追い風に、日経平均株価は徐々に上げ幅を拡大し、終値は前日比148円高の36,928円となりました。個別銘柄では、NTT(日本電信電話)による完全子会社化が報じられたNTTデータグループが前日比+16.73%でストップ高となり、1銘柄で日経平均株価を83円押し上げました。取引時間中に決算を発表したトヨタ自動車は、2026.3期の営業減益見通しが嫌気され、前日比-1.27%となりました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 一部報道で、日本時間8日23時、トランプ米政権が英国との貿易合意を発表すると報じられています。今後の各国の貿易交渉の動向を探る上で、発表内容に注目が集まります。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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05/08 12:00
【週間ランキング】日本株の値上がり/値下がり銘柄は?(5月第1週)
※画像はイメージです。 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(上位) 2025年5月第1週(2025年4月25日~5月2日) 2025年4月月間(2025年3月31日~4月30日) 2025年年間(2024年12月31日~2025年5月2日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2025年5月2日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(下位) 2025年5月第1週(2025年4月25日~5月2日) 2025年4月月間(2025年3月31日~4月30日) 2025年年間(2024年12月31日~2025年5月2日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2025年5月2日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 <参考>今週の日本株式市場パフォーマンス 主要指数 TOPIX: 東証33業種 (注)業種分類は東証33業種ベース。直近値は2025年5月2日時点。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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05/07 16:38
【野村の夕解説】日経平均株価は8営業日ぶり反落 FOMC控え小動き(5/7)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 7日の日経平均株価は前営業日比72円高の36,903円で始まり、その後は1日を通し、前営業日の終値36,830円を挟み一進一退の動きが続きました。日本時間7日未明には、一部報道機関が米国と中国が今週中に通商問題を巡る協議を開くと発表したと報じたことで、米中通商摩擦が緩和に向かうとの期待から上昇する場面もありました。一方、外国為替市場では、2日の15時半時点の145.20円前後から、本日10時台には一時1米ドル=142.75円前後と円高に推移し、株価の重石となりました。東証33業種別では、OPECが原油増産を決定したことで原油価格が下落しており、これを追い風に空運業が上昇した一方、トランプ大統領が述べた医薬品の品目別関税が嫌気され医薬品が下落しました。日本時間8日未明にはFOMCの結果発表を控え様子見姿勢が続き、終値は前営業日比51円安の36,779円と、8営業日ぶり反落となりました。個別企業では、トランプ大統領が外国で制作した映画に100%の関税をかける方針を示したことで、映画事業を手掛けるソニーグループが前営業日比-4.04%となり下げが目立ちました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 日本時間8日未明に、米国ではFOMCの結果公表が行われます。会合後、パウエルFRB議長が記者会見で、関税の影響についてどのようなスタンスを示すのか、注目されます。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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05/07 08:22
【野村の朝解説】米株反落、映画・医薬への関税が重し(5/7)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 日本が連休中(5月2日、5~6日)の米国株式市場は、2日はNYダウ及びS&P500が9連騰となりましたが、5日の両指数は10営業日ぶりに反落し、6日は続落となりました。2日は米中貿易協議の進展への期待が高まり、相場を押し上げました。しかし、その後は、トランプ大統領が外国で制作した映画や医薬品の関税について言及した事や、中国との交渉に進展がみられなかったことを受け、関税政策への警戒感が強まりました。外国為替市場では、貿易摩擦緩和への期待から2日に1ドル=145円台後半まで円安ドル高が進みましたが、その後はリスク回避的な動きが強まり、142円台半ばまで押し戻されました。 相場の注目点 引き続きトランプ政権の動向が焦点となります。足元でトランプ大統領は、一時的に免除していた医薬品や、これまで言及の少なかった分野の関税についても言及するようになっており、セクターの投資判断に影響を与えそうです。また、今週は日米の金融政策にも注目です。米国で6~7日に開催されるFOMCでは、金融政策は据え置きが見込まれます。トランプ大統領が利下げへの要求を繰り返す中、会合後のパウエルFRB議長の記者会見で関税の影響についてどのようなスタンスを示すのか、注目を集めます。9日にはFRB高官の講演が数多く予定されており、こちらも金融市場で材料視される可能性があります。日本では、8日に3月日銀金融政策決定会合の議事要旨が公表されます。米国の関税政策の影響に関する政策委員の議論を確認したいと思います。また、今週は国内で数多くの決算発表が予定されており、株式市場では物色が広がりそうです。8日にトヨタ自動車、IHI、任天堂、武田薬品工業、9日にはパナソニックHD、日本製鉄、三井不動産などの企業が決算を発表します。足元の業績に加え、関税の影響についてのコメントが注目されます。 (野村證券 投資情報部 坪川 一浩) (注)データは日本時間2025年5月7日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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05/04 09:00
【動画 3分チャート塾】シーズンⅤ:第1回 トレンドラインを引く3つのメリット
「動画 3分チャート塾」は、株価チャートの見方を学びたい初心者から中級者の方向けの動画シリーズです。 シーズンⅤ「トレンドラインを引いてみよう」初回の今回は、トレンドラインとは何か、トレンドラインを引くことによってどんなメリットがあるのか、説明しています。 シーズン I:意外と知らないローソク足(全8回)ローソク足の基本の読み方や中長期的な相場の捉え方などについてわかりやすく解説していきます。シーズンII:相場の見方の強い味方、移動平均線(全9回)移動平均線の基礎や活用法についてわかりやすく解説していきます。シーズンIII:上値、下値のメドを探ろう(全10回)上値、下値メドの探り方についてわかりやすく解説していきます。シーズンIV:相場の過熱感を測るには?(全9回)オシレーター系指標についてわかりやすく解説していきます。シーズンV:トレンドラインを引いてみよう(全9回)トレンドラインについてわかりやすく解説していきます。 ご投資にあたっての注意点
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05/03 12:00
【注目トピック】トランプ政権の関税政策 ~これまでに示された方針を整理~
※画像はイメージです。 トランプ政権の関税政策 関税政策に揺れる金融市場 米国のトランプ政権は、貿易赤字削減と米国への製造業の回帰を目的に掲げ、矢継ぎ早に関税引き上げの発表を行ってきました。 トランプ大統領は、様々な国・製品に対して関税政策を打ち出し、その直後に前言の修正を行うことも珍しくなく、関税政策を巡る不透明感が高まっています。株式市場のボラティリティー(変動率)の高さを示すVIX指数は、2025年2月末以降、平常時の10-20の水準を上回る状況が続いています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)データは日次で、直近値は2025年4月25日。全てを網羅している訳ではない。3月11日のカナダとの通商摩擦拡大では、カナダのオンタリオ州の首相が米国への電力供給停止も辞さない姿勢を示し、トランプ大統領がカナダから輸入される鉄鋼・アルミニウム製品への関税を25%から50%に引き上げると表明(後に、それぞれ撤回)した。VIX指数はS&P500指数を対象に、オプションを元に算出されるボラティリティー・インデックスで、指数の上昇は株価変動が大きくなる予想を反映する。VIX指数は「恐怖指数」とも呼ばれている。(出所)ブルームバーグ、各種報道資料より野村證券投資情報部作成 対メキシコ、カナダ制裁関税 トランプ政権は2025年3月4日、メキシコとカナダに対して、不法移民と薬物の流入を理由に、国家緊急事態令を宣布し、IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づいて、25%の制裁関税を発動しました。しかし、発動直後の3月6日に、①USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の基準を満たす品目と自動車・同部品に対する関税の発動を見送り、➁エネルギー関連製品やカリウム(肥料に使用)に対する関税率を10%に引き下げる決定をしました。 対中国追加制裁関税 中国に対しては、現在発動中の制裁関税(相手国の不公正な貿易政策への報復を認める通商法301条に基づき、輸入額の70%程度の品目に課税)の関税率を引き上げるという手段をとっています。フェンニタルをはじめとする違法に製造された麻薬性鎮痛薬の米国への流入阻止を目的に、IEEPAに基づいて2月4日に第一弾、3月4日に第二弾として、それぞれ10%の追加関税を発動しました。 品目別関税 別途、特定国以外にも、通商拡大法232条に基づいて、トランプ政権は3月12日に鉄鋼・アルミニウム製品に対して25%(軽減措置廃止)の関税、4月3日に自動車に対して25%の関税率引き上げを発動しました。 通商拡大法232条は、特定製品の輸入が米国の安全保障に脅威を及ぼすと商務長官が判断した場合に、追加関税などの措置を発動する権限を大統領に認めているものです。 (注)全てを網羅している訳ではない(2025年4月25日時点)。全世界相互関税は中国を除き、一律10%に上乗せする関税率は90日間(7月7日)まで猶予期間。カナダの対米報復関税は298億カナダドル相当の製品で、全てではない。USMCAは米国・メキシコ・カナダ協定。 (出所)ホワイトハウス、各種報道資料より野村證券投資情報部作成 現在調査中の品目も トランプ政権は、2月25日に通商拡大法232条に基づく銅製品、3月1日に木材の調査をそれぞれ商務長官に指示しました。4月14日には、医薬品や半導体の調査を開始したと商務省が発表しました。 商務長官は、大統領令が発表された日から270日以内に調査を完了し、米国の国家安全保障に脅威を及ぼすか否かの判断や、追加関税などの措置の提言を含めた報告書を大統領に提出します。大統領は、その調査報告書に基づいて、発動を判断し、措置を実施します。大統領が措置の発動ではなく、輸出国との交渉を行う決定を下した場合には、決定から180日以内に貿易相手国との合意を目指します。合意できない場合には、大統領が改めて措置を決定します。 国・地域別相互関税 トランプ政権は4月5日、IEEPAに基づいて、全輸入相手国に基礎関税10%を発動し、4月9日には、各国・地域別それぞれの貿易赤字に応じて、超過分の相互関税(約60ヶ国・地域を対象)を発動しました。 トランプ政権は、非関税障壁なども根拠に相互関税率を計算したとしていますが、米国の貿易赤字額を輸入額で割った比率の半分を相互関税率としており、貿易赤字の縮小が重要な一方、非関税障壁は何を問題としているのかが不明確です。 一転して、同日(4月9日)、トランプ政権は中国を除き、報復措置をとらなかった国について、超過分の相互関税の発動を90日間猶予すると発表しました。 これまでの各国・地域の対応 トランプ政権に関税を課せられた国・地域では、中国、カナダ、EUのように、報復関税を実施する国や、メキシコのように報復を抑制する国もあり、対応は様々となっています。日本は交渉で解決を目指す方針を示しています。 (注)全てを網羅している訳ではない。赤の網掛けは大統領権限で直ちに実施可能(通商301条は中国に対しては実施可能)な措置。 (出所)USTR(米通商代表部)、各種資料より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 澤田 麻希) ご投資にあたっての注意点
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05/03 09:00
【オピニオン】関税引き上げの実態経済への影響を注視
※画像はイメージです。 2025年5月6~7日に開催されるFOMCの討議資料となるベージュブック(地区連銀経済報告)が4月23日に公開されました。関税に関して以下のような報告が見られました。①消費:関税による値上げを見越した駆け込み需要が消費を押し上げたが、いくつかの地区では関税の不透明感を背景に先行きの見通しがかなり悪化した。②雇用:いくつかの地区は企業が雇用に対して様子見の姿勢をとり、経済の見通しがよりはっきりするまでは採用を止めるか、減らしている。③物価:ほとんどの地区で企業は関税の影響で原材料費が上昇すると予想している。多くの企業はすでに供給業者から値上げの通知を受け取った。ほとんどの企業は追加コストを顧客に転嫁する意向だ。ただし、消費者向けを中心にいくつかの業界ではコスト高は利益率を圧迫するとの報告があった。 一方、米国の主要企業の2025年1-3月期の決算発表が佳境を迎えていますが、今後の業績見通しについて下方修正、あるいは見通しの不開示が多く見られ、各社のCEO(最高経営責任者)からは関税引き上げの影響について不確実性、流動的、不透明との発言が相次いでいます。 相互関税の上乗せ分の適用は中国を除き、25年7月9日まで90日間、停止されており、それまでに米国との二国間協議が進展する見込みです。インドとの間では通商協定の第一段階の合意に向けて協議が前進し、韓国とは25年7月8日までに関税撤廃に向けてパッケージを用意する方針であるなど、先行的に交渉が進んでいる国もあります。また、対日交渉については、ベッセント米財務長官が「日本が列の先頭にいる」と発言しています。 この様に具体的な着地点に向けて交渉が進んでいることは不透明感の払拭の点で前進ですが、関税引き上げの影響の程度は見通しが困難な状況です。例えば、米国の主力企業であれば関税引き上げによるコスト増加分を価格に転嫁する行動が予想されますが、その転嫁の程度や、値上げによって需要がどの程度減少するかなどは不透明です。 (注)試算の前提は左図の注の通り。データは月次で、2025年3月より試算値。コアPCEインフレ率は変動の激しい食品、エネルギーを除いた個人消費価格指数。 (出所)ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル・インク(NSI)より野村證券投資情報部作成 野村證券はメインシナリオとして米国の実効関税率が10%台後半から20%程度まで上昇すると試算しています。 (注)試算の前提は次の通り。①国・地域別の相互関税は(90日間の猶予が終わる)7月9日に予定されている引き上げを回避し、10%に維持される。②対中国は、除外措置や関税率引き下げの組み合わせが見込まれ、平均関税率は60%に低下する。③米国・メキシコ・カナダ(USMCA)協定」に準拠するカナダとメキシコからの輸入製品への関税はゼロで維持され、非準拠品目への関税率は2025年4月2日の発表に沿って最終的に12%となる。データは2024年まで年次、2025年1月以降は月次。 (出所)ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル・インク(NSI)より野村證券投資情報部作成 この関税率は1930年代に見られた高率であり、その影響を推し量るのは困難です。相互関税の発表後に市場は相当なインパクトを織り込んだとも言えますが、実際の影響は今後発表される米国の経済統計、企業決算の内容を見る他はないでしょう。市場のボラティリティー(変動性)が高い状況が続くでしょう。 ご投資にあたっての注意点