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01/05 12:00
【銘柄特集】円高時に上昇した銘柄は?対米ドル円ベータランキング(1/5)
短期的にはドル円が140円割れを試す可能性も否定できない FRB(米連邦準備理事会)への利下げ期待の高まりと、日本銀行の金融政策正常化への期待が円高ドル安圧力を強めています。日銀がマイナス金利解除に向けた地均しを行い、市場の織り込みが進む局面ではドル円が140円割れを試す可能性も否定できません。短期的には円高ドル安への警戒が必要ですが、過去、円高が進行した時にはどのような銘柄が上昇したのでしょうか。また、それらの銘柄にはどのような特徴があるのでしょうか。 ※詳細版をページ下部に掲載しています。 円高時に上昇した銘柄の特徴とは? 過去(5年間)、円高米ドル安が進行した際に上昇した銘柄は、概ね下記のようなグループに分けられます。 ① 円高メリットグループ 小売・食品など、円高により商品や原材料の仕入コストが低下すると期待される業種 ② 円高無関係グループ ヘルスケア、インターネットサービスなど、為替の影響を受けにくいとされる業種 ③ 高成長期待グループ 成長期待の高い(実際に過去の増収率が高い)半導体・電子デバイス関連銘柄 ④ 高ROEグループ 内需、外需問わず、ROEが高い銘柄 一般的には、①や②のように、他の業種に比べ、円高米ドル安が業績に好影響(あるいは影響が限定的)であるグループの銘柄が上昇すると考えられがちです。ただ実際には、円高が業績的には不利に働くことが多い高成長期待銘柄や、ブルーチップ性の高い高ROE銘柄も数多く名を連ねています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (野村證券投資情報部 大坂 隼矢) ご投資にあたっての注意点
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01/05 08:33
【モーニングFINTOS!】NYダウ上昇も、上値の重い展開に(01/05)
海外市場の振り返り 4日の米国株式市場で、NYダウは小幅に反発しました。4日に発表された2023年12月のADP全米雇用統計では、民間部門の雇用者数が前月比+16万4,000人と、市場予想(同+12.5万人)を上回りました。加えて、2023年12月30日の週の新規失業保険申請件数は20.2万人と、市場予想(21.6万人)を下回り、いずれも労働市場の堅調さを示しました。これらを受け、NYダウは一時、前日比200ドル以上上昇する場面もありましたが、高値警戒感から、次第に上げ幅を縮小する展開となりました。米長期金利が4.0%へ上昇したことを受け、S&P500指数、ナスダック総合指数は下落しました。 相場の注目点 来週は、ウエルシアホールディングス(9日)やファーストリテイリング(11日)、イオン(12日)など、国内小売企業の決算発表が相次ぎます。各社の月次統計などでは、堅調な販売動向が確認されています。決算発表では、売上高に加えて、各社の人件費や原材料費などコスト高への対応にも注目が集まります。また、1月下旬から本格化する製造業の業績動向を見極める上で、安川電機(12日)の決算発表は重要です。 本日のイベント 米国では、12月雇用統計や12月ISMサービス業景気指数が発表されます。2023年12月FOMCを経て、市場では早期利下げ期待が高まっています。市場の利下げ観測を正当化するような内容となるか、注目されます。 (投資情報部 澤田 麻希) (注)データは日本時間2024年1月5日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【新春特集】野村證券の2024年見通し – 総集編 【野村の投資判断】緩やかな「株式持ち合い」の減少は続くと見る ご投資にあたっての注意点
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01/04 19:00
【新春特集】野村證券の2024年見通し – 総集編
野村證券の2024年の各種見通しをまとめました。各リンクよりご覧ください。※12月29日~1月3日に配信した野村週報 新春特集記事のまとめページです。 日米株式 【新春特集】2024年は業績主導で「円高でも株高」を予想(日本株式市場) ・1974年以降の年間リターンで円高は27例、そのうち15例は株高・企業の値上げ戦略に新潮流、利益率拡大に貢献・2024年12月末の日経平均株価は38,000円、年間の高値は40,000円を予想 【新春特集】イノベーション創出でS&P500指数は史上最高値更新へ(米国株式市場) ・米国経済に減速懸念はあるが、イノベーション創出で米企業業績は史上最高益更新へ・金融引き締めは終了し、2024年央以降に金融緩和が見込まれる・企業業績を反映し、S&P 500 指数は史上最高値更新へ 為替・債券 【新春特集】日本発の円安圧力は既にピークアウトか(外国為替市場) ・2023年も円安圧力が根強かったが、22年の円安とは重要な違いが存在・日本発の円安圧力は既にピークアウト、米利下げを織り込み米ドル円は140円割れへ・米国経済軟着陸成功時には1米ドル=140円前後が押し目買いの好機となる可能性も 【新春特集】FRBの利下げなどで新興国投資の魅力が高まる可能性(新興国為替市場) ・FRBの利下げや中国経済の安定化が実現すれば、新興国への資金流入が期待される・キャリートレードが弱まれば、ファンダメンタルズも新興国通貨を左右する要因に・主要新興国で選挙が予定されているが、大きなサプライズの可能性は低い 【新春特集】2024年に円債回帰へ(内外債券市場) ・2023年には本邦投資家による為替ヘッジなしの米国債購入が進展した模様・2024年にはFRBが利下げを実施、円高米ドル安が進む可能性・本邦投資家は円債回帰の公算 政治・経済 【新春特集】大規模金融緩和幕引きへの正念場(内外経済展望) ・2024年は長らく続いた日本銀行による大規模金融緩和がようやく幕引きを迎えると予想・海外金利が反落に向かう下での緩和解除は慎重に実施される可能性・「賃金・物価の好循環形成」の確度は高まっているが実現には不確実性も残る 【新春特集】2024年政治イベント・リスクの注目点(内外政治) ・国内の政治情勢は不透明に、海外投資家の動向を左右する可能性・米国は、大統領選挙の結果だけではなく、与党が上下院で過半数を得るかに注目・エマージング諸国(インドネシア、インド、南アフリカ、メキシコ)の選挙の影響に注意 その他 【新春特集】インフレとディスインフレ、どちらが構造的か?(投資の視点) ・中国で再燃するディスインフレ、日米で続くインフレのぶつかり合い・原油価格が重要なバロメーター、日米インフレ期待を左右・トランプ再選なら米中通貨安競争激化、岸田政権失脚ならアベノミクス復活か 【新春特集】政策面では政治情勢の影響、日本は企業価値向上の実行に注目(ESG) ・「気候変動対策のトリレンマ」に直面して脱炭素政策の加速は期待しにくい・企業によるカーボンニュートラル目標への取り組みが脱炭素に貢献することを期待・日本企業がROEの継続的な改善で企業価値向上に本格的に踏み出せるかに注目 【新春特集】令和6年、「甲辰(きのえ・たつ)」 「辰」には龍が割り当てられています。十二支の動物では唯一空想上の存在ですが、古代中国では実在すると考えられていました。現在も中国では恐竜の化石が多く出土します。古代の人々もこの化石を目の当たりにし、その存在を信じ… ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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01/04 15:59
【イブニングFINTOS!】日経平均株価は一時771円安も、引けにかけて下落幅縮小(1/4)
本日の株式市場 前日の米国株式市場では、12月FOMC議事要旨で参加者が当面の間、金融引き締めを維持する方針であることが確認され、主要3指数のうちハイテク株比率の高いナスダック総合指数の下落が目立ちました。米株安が重石となり、2024年大発会の日経平均株価は、昨年末比271円安の33,193円で取引を開始し、寄り付き後、一時は771円安の32,693円まで下落しました。半導体関連株をはじめとする成長期待の高い銘柄群の下落が目立ちました。 ただ、午後にかけては下落幅を縮小する展開となりました。為替市場が1米ドル=143円70銭近辺へと円安米ドル高に推移したことが、輸出関連株への下支えとなりました。大引け前には一段と下落幅を縮小させ、前日比175円の33,288円で本日の取引を終了しました。円安ドル高が好感されたことも国内株式市場への追い風となり、東証の値上がり銘柄数は1,216と、値下がり数の410を大きく上回り、TOPIXは昨年末比12.40ポイント高の2,378.79ポイントとなりました。 本日発表予定の海外経済指標等 【米国】・12月ADP全米雇用レポート(前月差) 前月:+10.3万人 予想:+12.5万人 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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01/04 09:30
【新春特集】2024年相場大展望 – 総集編
野村證券のリサーチャー4名が、それぞれの専門分野から2024年の相場展望について解説します(12月30日(土)~1月2日(火)に掲載した動画の再配信です)。 テクニカル編(23分) 解説:野村證券投資情報部 ストラテジスト 岩本 竜太郎 世界経済・為替編(33分) 解説:野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト 尾畑 秀一 日本株編(33分) 解説:野村證券市場戦略リサーチ部 チーフ・エクイティ・ストラテジスト 池田 雄之輔 米国株編(19分) 解説:野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト 村山 誠 ※動画の終盤に言及している、「アンケート」については、FINTOS!ではご回答いただけません。ご了承ください。 ご投資にあたっての注意点
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01/04 08:29
【モーニングFINTOS!】米国株下落、早期利下げ期待が後退(01/04)
海外市場の振り返り 3日の米国株式市場で、主要3指数は下落しました。朝方にリッチモンド連銀のバーキン総裁が、「ソフトランディングの可能性が高くなっている」と述べましたが、追加の利上げの可能性も排除しないとし、3月利下げ観測については「ほど遠い」と否定的な見方を示しました。これを受けて米10年国債利回りが上昇する中で、NY主要株価指数は下落して寄り付きました。現地時間10:00に発表された12月ISM製造業景気指数は47.4と市場予想の47.1を上回りましたが、好不況の分かれ目となる50を引き続き下回りました。14:00に公表された12月FOMC議事要旨では、全ての参加者が2024年内の利下げシナリオを示した経済見通しを「極めて不確実」と強調したうえで、経済状況によっては追加利上げもあり得ると指摘し、数人は「政策金利を据え置く期間は今の想定より長くなるかもしれない」とも述べていたことが明らかになりました。これを受け、株式市場ではFRBによる早期利下げ観測が後退し、主要3指数とも下げ幅を拡大させました。 相場の注目点 2024年も市場参加者の最大の関心は、主要国の金融政策に集まりそうです。米国、ユーロ圏では金融引き締めから金融緩和への転換が予想され、利下げ開始時期、利下げペース、政策金利の着地点が注目されます。一方で、日本に関しては金融政策の正常化が予想され、マイナス金利の解除とYCC(長短金利操作)政策の撤廃時期、その後の利上げの有無が注目点と予想されます。 (投資情報部 寺田 絢子) (注)データは日本時間2024年1月4日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【新春特集】イノベーション創出でS&P500指数は史上最高値更新へ(米国株式市場) 【新春特集】2024年政治イベント・リスクの注目点(内外政治) ご投資にあたっての注意点
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01/03 19:00
【新春特集】イノベーション創出でS&P500指数は史上最高値更新へ(米国株式市場)
米国経済に減速懸念はあるが、イノベーション創出で米企業業績は史上最高益更新へ金融引き締めは終了し、2024年央以降に金融緩和が見込まれる企業業績を反映し、S&P 500 指数は史上最高値更新へ 野村證券では、米国の実質GDP成長率は、2022年の前年比+1.9%に対し、2023年は同+2.4%と見込んでいますが、2024年は同+1.3%、2025年は同+0.4%と、成長率の鈍化を予想しています。2022年3月以降、インフレ抑制のためにFRB(米連邦準備理事会)は積極的な政策金利引き上げを行ってきました。このため米国の金融環境(金利や株価、社債スプレッド、米ドル相場などを加味したもの)は景気抑制的である可能性が高く、緩慢な信用引き締まりもあり、短期的に明らかな引き金となる要因は見えないものの、米国の実質GDP成長率は2024年後半に前期比年率でマイナス成長となる可能性が高いと予想しています。 一方、S&P 500 指数構成企業の業績動向をみると、四半期EPS(1株当たり利益)の前年同期比増減益率は2022年10-12月期以降、減益となっていました。しかし、直近の2023年7-9月期には前年同期比増益に転じました。そして、2023年10-12月期以降、増益基調となると予想されています。 次に、年度ベースでの企業業績動向をみてみます。2023年については、年前半が前年同期比減益だったこともあり、前年比微増益とほぼ横ばいが予想されています。しかし2024年以降は、1株当たり利益は拡大が予想され、2025年にかけて、史上最高益を更新していくと予想されています。 米国経済については、2024年は成長率鈍化が予想されるにも拘わらず、米国企業の業績拡大が予想される要因としては、米国には独自の技術力やビジネスモデルで新しい製品・サービスを投入し、業容を拡大している企業が多数あることが挙げられます。そのような企業のイノベーション創出力が、業績予想に織り込まれていることが大きいと推察されます。 これまで世の中になかったような新しい製品・サービスが普及すれば、そのような製品・サービスを提供する企業の売上高や利益は、米国の景気動向の影響を直接的には受けずに、拡大していくことになります。 加えて、米国にはグローバルに競争力を発揮している企業が多くみられます。米国以外でも製品・サービスが普及すれば、そのような製品・サービスを提供する企業の売上高や利益は、米国景気とは直接的には関係なく拡大していくことになります。 イノベーションの事例として、生成AIが挙げられます。現在は、大規模言語モデル等の開発のためのデータセンターやクラウドサービスなどへの投資が盛んに行われていますが、将来的には生成AIを搭載した各種デバイスが市場に投入され、AIを活用した新しいサービスが投入されると予想されます。今後、人々の働き方や生活のスタイルを大きく変えると予想される生成AIは、社会への普及は一朝一夕では無理で、今後何年もかけて普及していく、息の長いものになると予想されます。 2024年は、実質GDP成長率でみた米国景気は必ずしも力強くはないかもしれませんが、生成AIのような成長機会を捉えることができる情報技術企業などが、米企業業績をけん引していくと予想されます。 次に、米国の金融政策についてみてみたいと思います。2023年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、大方の予想通り、3会合連続で政策金利は据え置かれました。12月FOMCで示されたFRBの今後の政策金利見通しでは、2024年は3回、2025年は4回、2026年は3回、利下げをする可能性が示されました。 野村證券では、今後のFRBの金融政策については、2024年は、6月FOMCで0.25%ポイントの予防的利下げを行い、7月FOMCでは据え置いて、9月から3会合連続で0.25%ポイントの利下げを行い、合計4回、利下げを行うと予想しています。2025年については、会合毎に0.25%ポイント幅で計8回利下げを行い、2025年末の政策金利は2.25-2.50%と予想しています。 上記のような米国経済の動向と、金融政策の方向から、米長期金利(米10年国債利回り)について野村證券では、2023年末予想の4.20%に対し、2024年末は3.45%、2025年末は3.35%と、今後低下していくと予想しています。 米企業業績は過去最高益を更新していくと予想される一方、米長期金利は今後低下していくと予想され、2024年にはS&P 500 指数は史上最高値を更新すると予想されます。 リスクとしては、インフレが予想以上に長期化することが挙げられます。米国のインフレは足元で鎮静化しつつありますが、一段の鎮静化に予想以上の時間がかかると、金融政策に影響を及ぼし、米長期金利も影響を受ける可能性があります。 留意点としては、2024年11月に行われる大統領選挙における議会の状況について注意が必要です。仮にバイデン大統領が再選されたとしても、上下両院で共和党が多数派を占める「ねじれ状態」となった場合、政権の政策遂行能力が低下する可能性があります。その場合、例えば、財政協議が難航し、政府機関が閉鎖される可能性が再び高まる、といった事態になることも考えられます。 (野村證券投資情報部 村山 誠) ※野村週報 2024年新春合併号 「米国株式市場」より ※こちらの記事は「野村週報 2024年新春合併号」発行時点の情報に基づいております。※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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01/03 13:00
【新春特集】政策面では政治情勢の影響、日本は企業価値向上の実行に注目(ESG)
「気候変動対策のトリレンマ」に直面して脱炭素政策の加速は期待しにくい企業によるカーボンニュートラル目標への取り組みが脱炭素に貢献することを期待日本企業がROEの継続的な改善で企業価値向上に本格的に踏み出せるかに注目 2024年は様々な国、地域で選挙が行われる予定です。各国内の政治情勢が優先される結果、脱炭素への政策的後押しが弱まらないかには注意をしておく必要があります。 IMF(国際通貨基金)は、「気候変動対策はトリレンマ」、つまり気候目標の達成・財政の持続可能性・政治的実現可能性を全て同時に満たすことはできない、と指摘しています。脱炭素政策のために財政赤字を際限なく増大させるわけにもいかないし、その負担を家計に負わせ過ぎると政権基盤に影響しうる、といったことを考慮する必要がある、ということです。 既に欧米では家計負担への配慮を名目に、エンジン車の販売禁止時期を先送りしたり、電力料金引き上げ回避のため洋上風力発電への補助金積み増しを見送ったり、といった動きが出ています。こうした動きが選挙対策に関連して結果的に脱炭素への政策的な後押しを弱めることになるのではないか、と懸念されます。 とはいえ、異常気象やその被害が頻発する状況を前にして脱炭素政策自体が打ち切られるわけではない、ということはできるでしょう。 国際的な政治イベントとしては、2024年11月5日の米国大統領選挙が最も注目されます。米国では、民主党と共和党の政治的対立が、脱炭素と関連した反石油・ガス産業への立場や、所得格差など社会問題への考え方と絡み合う形で「反ESG」的な動きが政治情勢と連動しやすくなっています。 議会選挙も合わせた結果次第では米国の脱炭素政策への加速期待が失われるだけではなく、パリ協定からの脱退など国際的に脱炭素に向かう政治的な求心力が弱まることにもなりかねません。 欧州でも2024年6月にEU(欧州連合)議会選挙が予定されています。2023年11月のオランダ下院選挙で反EUを掲げる極右政党が第一党となりました。脱炭素政策とも関連する燃料費・光熱費の家計負担増加が一因とされています。オランダはEU内で環境政策の先陣を切ってきました。それだけに、今後反ESGの動きと連動してEU議会の勢力図が変わるようだとEUの政策運営に影響が出る可能性もあります。 またイギリスでは2024年内に総選挙が行われる可能性が高いとされています。スナク政権が脱炭素政策を修正して政権維持を図っていますが支持率低迷が続いており、今後の対応を含めて注意が必要です。 日本では、2024年に国政選挙の予定はありませんが、同年9月の自民党総裁任期をにらんで政局流動化リスクには注意が必要です。特に、日本が脱炭素政策を推進するにあたって、再生可能エネルギー(再エネ)発電比率が上昇してくるまでの間に化石燃料による火力発電の依存度を下げようとすると、現実的には原子力発電所の再稼働数を増やす必要があります。ただし、そのためには強力な政治的指導力が必要と考えられます。 一方、これまで太陽光および風力で再エネ導入を牽引してきた中国では、景気自体への懸念がある中で、過剰生産能力への懸念を一因に再エネ設備関連企業の業績悪化が指摘されています。財政赤字の問題などから再エネに限らず政策的なサポート余地が狭まっている点には注意しておきたいところです。 このように、各国の政策の追い風が強まることにはあまり期待できない状況ですが、多くの企業は2050年カーボンニュートラル目標を掲げています。そして、気候変動が企業活動に与えるリスクと機会、それらへの対処方針についての情報開示とその実行を求められています。水素関連やCCS(二酸化炭素の回収・貯留)関連などの新技術が実装され商業ベースに乗る見通しが高まるかどうか、という企業の貢献に注目して脱炭素の進展を見極める必要があります。 話題を日本企業に移します。2023年3月に東京証券取引所(東証)が上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願い」(以下、「要請」)を行いました。この「要請」では、上場企業に自社の企業価値の向上を求め、向上策についての情報開示と実行を求めるものです。当初はPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に対する要請と受け取られたこともあって、そうした企業の株主還元が一段と注目されました。 しかし、東証としては①「要請」を受けて企業価値向上策を開示する企業が依然として少ないこと、②PBR1倍が企業価値向上のゴールではないという考え方に基づいて、「要請」を受けて開示した企業のうち、PBR1倍超の企業の開示が相対的に少ないこと、に問題意識を持っているようです。2024年1月以降、向上策を発表した企業の開示事例や発表数を公表する方針で、積極的な開示を促しています。 こうした企業価値向上への方針の開示や実行を後押しするために機関投資家による企業への働きかけ(エンゲージメント)の重要性も高まると考えられます。 2023年には日本の機関投資家が、女性取締役比率や政策保有株の保有比率を基に取締役選任議案への賛否を決めるといった議決権行使基準を設定し、それが企業の対応を変化させました。この流れは今後も続き、2030年に3割という目標に向けて女性取締役の増加は続き、政策保有株の削減も続くでしょう。 こうした数値基準に比べるとPBRは株価次第という面もあって同列には扱いにくいです。しかし、例えば株価がPBR1倍割れとなっている企業が十分な改善策を策定しない場合、取締役選任議案に賛成しないといった議決権行使基準が検討され、設定されることもありうるため、企業の対応が促されることになるでしょう。 PBR1倍を超えてさらに企業価値を向上させていくためには株主還元に加えて利益をどのように上げていくかについての戦略が必要でしょう。そもそもPBRはROE(株主資本利益率)とPER(株価収益率)の掛け算です。足元の利益率であるROEが継続的に改善することによって先行きの期待を反映するとされるPERも上振れし、PBRが上昇すると整理できます。ところが、下図にある通り、過去10年ほどコーポレートガバナンスコードなどで企業価値の向上を要請されてきた日本企業は、全体としては株主還元を大きく増やしたもののROEの継続的な改善には至っていません。これではPBRの上昇は期待しにくいと言えるでしょう。 2024年に注目すべきは、ROEの継続的改善とその結果としての企業価値向上につながる、中長期的な経営方針を打ち出す企業が増加するかどうかでしょう。脱炭素やデジタル化などの事業機会を踏まえ、それぞれの強みを活かして利益を伸ばすのか、新たな挑戦をするのか、各企業の戦略がカギを握ります。そうした戦略が投資家の理解・後押しを得られれば、PBR上昇にもつながりやすくなると期待されます。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 若生 寿一) ※野村週報 2024年新春合併号 「ESG」より ※こちらの記事は「野村週報 2024年新春合併号」発行時点の情報に基づいております。※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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01/02 19:00
【新春特集】NISAで投資を始める人たちへ 第2回 日本政府の「本気度」は
野村ホールディングス ファイナンシャル・ウェルビーイング室SCO(シニア・コミュニケーションズ・オフィサー)の池上浩一が、NISA(少額投資非課税制度)や投資に関する疑問にお答えする本連載。2回目となる今回は、第1回でもお答えした「なぜ新NISAという制度がつくられたのか。国の狙いは何か」という疑問について、別の視点から説明します。 英国のビッグバンで、ロンドンが国際金融市場に 「なぜ新NISAという制度がつくられたのか。国の狙いは何か」という問いに対するもう1つの私の答えは 日本政府が国際金融センターの創出を目指しつつ、個人の金融資産を「貯蓄から投資へ」振り向けることを促しており、日本の経済が活力を取り戻す局面に入ったからです。 初めに、英国初の女性首相、マーガレット・サッチャー氏の「サッチャー革命」とも呼ばれる、英国証券取引所が実施した金融改革ビッグバン (Big Bang) について説明します。 19世紀に世界を支配した英国は20世紀に衰退局面を迎え、1970年代には経済政策が行き詰って「英国病」と呼ばれるほど経済状況は悪化しました。 1979年に首相に就任したサッチャー氏は「あらゆる産業の中で、最も多くの富を生み、最も多くの雇用を創出するのは金融業界ではないか」と考え、金融業界に英国の未来を託すそうと決断し、いくつもの「改革」を実行しました。 主な改革の内容は、 株式などの売買手数料の自由化取引所の会員権の開放による銀行資本の市場参加取引所集中義務の撤廃株式取引税の引き下げ株式売買にコンピュータを導入 など、当時としては画期的なものでした。 そして、ロンドンは世界最先端の金融都市の一つとなり、英国経済は復活を遂げました。 当時、英国の復活は「ウインブルドン現象」と呼ばれました。英国人の誇りの一つともいえるテニスの「ウインブルドン」は、世界四大大会の一つとして広く知られる存在です。 しかし、出場する強豪選手に英国人選手はあまりおらず、例年、外国人選手が多数を占めます。 金融ビッグバンは、米国系を中心とした外資系の金融機関が、時代遅れになりつつあった英国系金融機関を買収し、米国などからロンドンに最先端の金融人材が流入してきました。そして、ロンドンの金融市場は国際的な競争力を持つようになり、見事に発展を遂げたのです。 つまり、外資系企業と外国人労働者の活躍によって英国が復活したことから、テニスの大会になぞらえて「ウインブルドン現象」と呼ばれたのです。 日本版ビッグバンで改革が進展 そこで英国を範に取り、1996年から橋本龍太郎元首相が着手したのが、「フリー」(市場原理が働く自由な市場に)、「フェア」(透明で信頼できる市場に)、「グローバル」(国際的で時代を先取りする市場に)を改革の三原則とした「日本版金融ビッグバン」です。 日本版ビッグバンには、バブル崩壊などによって空洞化しつつあった日本の金融市場を、ニューヨークやロンドンと並ぶ国際市場へと地位を向上させ、日本経済を再生させる狙いがありました。 1997~1998年起こったアジア通貨危機やロシア危機によって、世界経済は混乱していましたが、日本版ビッグバンによって国内の金融システム改革は着実に進展。政府も「国内的には評価できる」と総括しています。 10年以上たった後に再び前に進みます。2012年12月の衆院選で自民党は選挙公約に「日本をアジアの金融・運用の中心地にすべく、企業の活力ある経済行動と国民資産を適切に運用できる公正な競争条件の確保かつ十分競争できる活発な金融資本市場を構築する。まずは金融セクターの対GDP比を英国並みの10%台に押し上げ、『業』としての金融を育成する」と宣言しました。 並行して「家計の安定的な資産形成の支援」と「企業への成長資金の供給」を目的として、2014年から英国のISA(Individual Saving Account)をモデルとした日本版ISA「NISA」が導入されました。 さらに、2014年12月の衆院選で自民党は重点政策に「金融・証券市場の活性化・資産運用市場の強化を図ること等により、国際金融センターとしての地位を確立して、アジアナンバーワンの金融・資本市場の構築を目指す」ことを掲げていました。今も政府は、東京と大阪、福岡の3都市を「国際金融都市」に発展させるとしています。 「国際金融都市」創出に向けた日本の本気度 国際金融都市には英語を話すことができる優秀な人材が不可欠です。そこで、2017年3月に法務省は、一定の要件を満たした研究者や技術者などの外国人の高度人材に対して、条件を満たせば最短1年の在留期間で永住ビザの許可を認めることができるよう、制度を改めました。 先進国では永住権(グリーンカード)取得に必要な在留期間は10年程度としているケースが多く、日本の制度改革の「本気度」がうかがえます。 法務省は永住権の付与について「ポイント制度」を導入しました。 外国人が大学院修士課程を卒業すると20点、博士課程を卒業すると30点、年収が1,000万円以上だと40点なので、博士課程を卒業して年収が1,000万円以上だと、30点+40点=70点となり、最短3年で永住権を得られます。さらに細かい条件により、5~10点が加算されます。そして、合計で80点以上になると最短の1年で永住権を得られます。(詳しくは、出入国在留管理庁のウェブサイトをご覧ください) 日本では少子高齢化や、経済の成熟化による人々の「ハングリー精神」の喪失で、経済成長率が低下する傾向にあります。私は海外から高度人材を受け入れるこの改革によって、日本が新たな時代へと移行するチャンスをつかむかもしれないと考えています。 日本が海外の人材を積極的に受け入れて金融業界などで活躍できるよう土壌を整えることを、世界の投資家たちは期待しているのではないでしょうか。 日本は米国に追いつけるか 上の図は、2023年3月時点の日本と米国の個人金融資産の構成を比較した図です。日本は依然として半分以上が現預金であるのに対し、米国は半分以上が有価証券となっています。 日本人の金融資産に現預金が多い理由について、日本に住む人が「投資は怖い」と感じ、消極的であるため、と説明されることもあります。 1980年頃、米国の家計の金融資産の現預金比率は2割程度でした。ただ、前述した通り、1985年のプラザ合意で米国政府は円高ドル安を日本政府に認めさせることで、輸出の多かった日本企業の国際競争力を弱めようとしました。しかし、ドル安が進んだ場合、米国に住んでいる人のドルの現預金が多いと、結果的に在住者の生活コスト上昇につながりかねません。 一方、米国は1978年に「確定拠出年金」(401K)を導入し、米国在住者が税のメリットを受けながら、現預金から有価証券へと投資をしやすくする制度を導入していました。さらに、1980年代から米国の小学校で金融教育が浸透し始めたようです。 私が米国の友人から聞いた話では、当時米国では「Get Rich Slowly」という言葉を合言葉にして金融教育が始まったそうです。「Slowly(ゆっくりと着実に)」「Get Rich(金融資産を増やして豊かになろう)」。そういった理念のもと、金融教育も浸透し、現在の米国では個人の金融資産の現預金比率は10%強にまで下がったのです。 日本の個人の金融資産は、米国に次ぐ世界2位の規模です。これは国にとっても大切な資産と言えます。そして、日本政府もNISAや企業型確定拠出年金、iDeCo(個人型確定拠出年金)などを導入し、株式や投資信託への投資に税メリットを与えることで、日本に住む人の「貯蓄から投資へ」の流れを作ろうとしています。 そして2022年度から高校の教育課程に金融・経済教育が導入されました。 国家が衰退局面を迎え、ドル安が進んだ時に米国が始めた政策を、少子高齢化や円安の進行などで経済力の低下が懸念される現在の日本が始めているのです。 私は数十年前に米国で起こったことが、日本でも同じように起こると私は期待しています。そして数十年後、日本の個人金融資産における有価証券の比率は、米国のように大きくなるとみています。 現預金から有価証券へのシフトが始まると、日本の企業や自治体にも資金が流入する可能性があります。これにより、日本経済の活性化につながるかもしれません。2024年からのNISAが、日本に住む人たちの未来を明るくすることを願ってやみません。 第3回に続く 【池上 浩一】野村ホールディングス株式会社ファイナンシャル・ウェルビーイング室SCO(シニア・コミュニケーションズ・オフィサー)。1979年野村證券株式会社入社、人事部に配属。英ロンドン大に留学後、海外投資顧問室、第一事業法人部、国際業務部を経て、法人開発部長やIR室長、グループ本部広報部長兼宣伝部長などを歴任。2011年から名古屋大客員教授も務める。2023年4月から現職。社内では、日本版金融ビッグバンの際に講演をしていたことから「ビッグバンおじいさん」と呼ばれて親しまれ、社内サイトでの連載コラムは約1000回を数える。 ※本稿は、2024年1月現在の情報に基づくものです。※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点