加工・輸出セクター内では電機・精密が相対的に有利

2024年の日本株を展望する際に、「円高転換」の可能性は大いに注視すべき要素です。円高と株高は互いに共存することが可能なのでしょうか。ドル円とTOPIXの暦年リターンの組み合わせを1974年から2022年までの合計49例のサンプルで見ると、円高となったのは27例です。その中で、「円高・株高」のケースは15例と、「円高・株安」の12例を上回っています。「円高・株高」の直近5例のケースは2003年、2004年、2017年、2019年、2020年でした。そのうち、2003年を除く4例はすべて米10年物国債利回りが低下した年です。これらを踏まえると、円高・株高が発生する条件として、米金利低下が重要な要素であると言えます。

次に、「円高・増益」の達成は難しいのでしょうか。野村證券の試算によれば、1円の円高・ドル安はラッセル野村ラージキャップの2024年度の予想経常利益(全産業ベース)を0.28%押し下げる効果を持ちます。たとえ10円の円高・ドル安が実現したとしても、経常利益を押し下げる効果は2.8%に留まる計算です。また、日本企業全体の為替感応度(為替変動が利益に与える影響度)は段々と低下しており、円高・ドル安が業績に与える悪影響はかつてほどではなくなっています。

2024年については、米金利低下と円高が同時に進むという状況が予想されます。それを踏まえて、セクター別の株価反応のパターンを為替と米金利の2つの軸から分析します。米金利低下と円高の組み合わせがメリットとなる業種は、2024年に高いパフォーマンスを発揮する可能性が高いと予想できます。例えば、TOPIX 17業種のうち加工・輸出セクターを比較すると、自動車・輸送機より機械、また機械より電機・精密の方が、円高のデメリットが小さく、また米金利低下から得られるメリットが大きいと言えます。同様に内需セクターに目を向けると、銀行よりも電力・ガスの方が、米金利低下や円高に強い傾向があります。

また、米金利と円金利の組み合わせで考える方法もあります。もし、米金利が低下する一方で、円金利が上昇するという展開を想定するのであれば、電力・ガス、小売、食品などの業界に投資の魅力があると言えます。ただし、ここでは円金利の上昇は日本の「デフレ脱却」の証であるという観点は考慮されていないので、その点を割り引いて考える必要があります。

(野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 「円高に強いセクター、銘柄」を探る(2023年12月12日配信)」

(注)要約編集元アナリストレポートの発行日は2023年12月12日。画像はイメージ。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成

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