特集
461件
-
08/12 12:00
【銘柄特集】2024年7月IPO銘柄のパフォーマンスと8月IPO銘柄の紹介
2024年7月のIPO銘柄のパフォーマンスと、今後のIPOの予定を紹介します。 7月IPO銘柄のパフォーマンス 7月2日 上場PRISM BioLab(206A)市場区分:グロース市場事業内容:独自の創薬基盤(PepMetics技術)を用いた新規医薬品の研究・開発 7月18日 上場カドス・コーポレーション(211A)市場区分:スタンダード事業内容:土地活用の提案から設計・施工までトータルプロデュースすることにより、流通店舗の建築工事を受注する建設事業及び当該店舗等をテナント企業に賃貸する不動産事業 7月23日 上場フィットイージー(212A)市場区分:スタンダード事業内容:アミューズメントフィットネスクラブの運営、企画、FC展開事業 7月26日 上場タイミー(215A)市場区分:グロース市場事業内容:スキマバイトサービス「タイミー」の運営等 7月29日 上場Liberaware(218A)市場区分:グロース市場事業内容:屋内狭小空間点検ドローン「IBIS」をベースにしたドローン等の開発と、点検サービス、ドローンのレンタル・販売、及びドローン等で収集したデータの処理・解析するサービスを提供 7月30日 上場Heartseed(219A)市場区分:グロース市場事業内容:重症心不全患者を対象としたiPS細胞由来心筋球移植治療をはじめとする再生医療等製品の研究・開発 7月31日 上場Faber Company(220A)市場区分:スタンダード事業内容:デジタルマーケティング自動化ツール「ミエルカ SEO」等 SaaS 提供、フリーランス人材等を活用したマーケティング支援 (注)初値及び直近月末終値が公開価格に対して上回っているものは赤、下回っているものは青で表示。(出所)日本取引所グループのウェブサイト、各新規上場会社の有価証券届出書等公表情報を基に野村證券作成 8月IPO銘柄の紹介 8月21日 上場オプロ(228A)市場区分:グロース市場事業内容:帳票に関するデータオプティマイズソリューション、サブスクリプションビジネスの販売管理に関するセールスマネジメントソリューションで構成されるクラウドサービス事業 8月29日 上場Cross Eホールディングス(231A)市場区分:Q-Board事業内容:ハウステンボスや公共施設等の施設管理および廃棄物焼却炉や資源リサイクル施設等の建設、産業用機械等の設置工事業 (注1)TOKYO PRO Marketの新規上場会社は含まれない。(注2)全てを網羅しているわけではない。(注3)8月のIPO銘柄は、8月6日時点での予定。(出所)日本取引所グループのウェブサイト、各新規上場会社の有価証券届出書等公表情報をもとに野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
-
08/12 09:00
【野村の視点】生成AI機能追加で注目の「次期iPhone」関連企業を紹介
(注)画像はイメージ。 AI関連サービスは、サーバーから徐々にスマートフォンなど端末へと用途の広がりが見込まれます。 下のグラフは、「アップルの製品、iPhoneの販売実績と市場予想」です。 代表的なスマートフォンであるアップルの「iPhone」の販売台数は、巣ごもり需要の剥落により2023.9期は前年度に比べ減少しました。2024.9期も減少が市場では見込まれています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)2024.9期以降は2024年7月15日時点のファクトセット集計の市場予想。(出所)アップル、ファクトセットより野村證券投資情報部作成 2024年6月、アップルは開発者向けイベント「WWDC」で、当社として初の生成AI 機能「Apple Intelligence」を発表しました。 Apple Intelligenceを最大限活用するには「iPhone 15 Pro」以降のモデルが必要となり、2025.9期でのiPhoneの買い替えが活発化すると期待されます。 また、スマートフォン市場の成熟化により、iPhoneの販売台数は浮き沈みがありますが、販売単価は継続的に上昇していることがわかります。 2024年秋に発売されるとみられる次期iPhoneでは、AI機能をより実効しやすくするために半導体チップの性能向上を図るとみられ、販売単価のさらなる上昇が予想されます。 日本企業のアップルサプライヤー アップルは部品や製品製造を行うサプライヤーをリスト化し公表しています。サプライヤーリストには多くの日本企業が名を連ねています。 下図は「日本企業のアップルサプライヤー」をまとめたものです。 (注)アップルサプライヤーは全てを網羅しているわけではない。MLCCは積層セラミックコンデンサー。触覚デバイスは、力・振動・動き・熱・静電気などの触感によってユーザーに皮膚感覚フィードバックを与える電子部品。異方性伝導膜は電子部品を基板に実装し、回路を形成するために用いられるフィルム素材。偏光板は、光の透過を制御することで、ディスプレーの表示を人が見えるようにする光学フィルム。(出所)アップル、各社会社資料より野村證券投資情報部作成 次期iPhoneでは、AI機能を実行するため、より半導体チップによる従来以上に高い処理能力が必要になるとみられる中、熱対策やバッテリー容量の引き上げ、機器の省電力化が必要になるとみられ、搭載される部品も高性能化が求められます。 買い替えや次期iPhoneの販売が増加すれば、iPhoneの高機能化を支えてきた日本企業のビジネスチャンスは拡大すると期待されます。 (野村證券投資情報部 大坂 隼矢) ご投資にあたっての注意点
-
08/11 19:00
【特集】野村證券・米国株ストラテジストが語る「生成AIの恩恵を受けた次の有望セクター・企業」
外国株式、特に米国株式市場が世界の投資家の注目を集めています。その中心となっているのが、「マグニフィセント・セブン(M7)」と呼ばれる巨大テクノロジー企業7社です。人工知能(AI)技術の進展や新製品の登場により、これらの企業の動向が市場全体を左右する状況が続いています。M7各社の現状や今後の展望、さらには米国株式市場の見通しについて、野村證券投資情報部 シニア・ストラテジストの村山誠が解説します。 マグニフィセント・セブンの中でも明暗 ――マグニフィセント・セブン(M7)とはどのような企業でしょうか。それぞれの現状と今後の展望を教えてください 村山誠(以下、同)マグニフィセント・セブン、通称M7とは、テクノロジーを中心とした米国の巨大企業7社を指す呼び名です。具体的には、アップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)、テスラのことを指します。これらの企業は時価総額が非常に大きく、世界経済に大きな影響を与える存在となっています。 各社の現状と展望はそれぞれに特徴があります。例えば、エヌビディアは現在、人工知能(AI)ブームの真っただ中にいます。AIを実現するためのGPUなどの半導体が圧倒的に不足しており、需要が供給を大きく上回っている状況です。エヌビディアは供給を増やすために半導体製造受託企業との協力による増産などを進めていますが、それでも追いつかないほどの需要があります。 一方、テスラの状況は少し異なります。確かに電気自動車という環境対策の面で大きく成長しましたが、最近は競合他社の参入も増え、株価は軟調となっています。ただし、今後の展望としては、電気自動車だけでなく、「レベル4」と呼ばれる特定の条件(場所、天候、速度など)の下でシステムがすべての運転を行う自動運転など、AIを使用した機能が発展すれば、市場の評価が再び変わる可能性は十分にあると考えています。 アマゾン・ドット・コムも興味深い変化を遂げています。もともとEコマースの会社として知られていましたが、現在では「Amazon Web Services(AWS)」というクラウドサービスが利益の大きな柱になっています。AWSは2020年くらいから利益貢献が顕著になり、需要が急激に伸びています。それに伴って同社の株価も上昇しています。 アップルは最近まではiPhoneの買い替えがあまり進まず、株価の上昇も他企業と比べれば緩やかでした。しかし、新型iPhoneへの期待が高まると株価が上昇する傾向にあるので、今後の新製品発表に注目が集まっています。 アルファベットとマイクロソフト、メタも、AI関連の事業展開に注目が集まっており、最近は株価が回復傾向にあります。これらの企業に共通しているのは、その規模の大きさです。売上や利益の規模が日本企業の比較にならないほど巨大で、しかも実態を伴った成長を遂げている点が重要です。 次の新型iPhoneにAI実装か ――直近で、M7について注目に値するイベントはありますでしょうか 2024年9月に予定されている新型iPhoneの発売には大きな注目が集まっています。新型iPhoneにはAIが実装される可能性が高く、特に写真や動画の処理機能が大きく進化すると予想されています。 具体的には、AIを活用することで、自分の顔をよりきれいに表現したり、写真に映り込んでしまった不要な要素を簡単に取り除いたりする機能が搭載されるかもしれません。こうした機能は、InstagramなどのSNSに投稿する際に重宝されると考えられ、新たな買い替え需要を喚起する可能性が高いです。 アップルの株価は、新型iPhoneの発売を巡って一定のパターンを示す傾向があります。通常、新型iPhoneへの期待が高まり始める春から初夏頃、具体的には5~6月頃から株価が上昇し始めます。その後、8~9月にかけて実際の製品が発表され、高い評価を得ると株価がさらに上昇する傾向が見られます。 アップルがAI技術の採用で他社に後れをとっているという見方もありますが、これはアップルの戦略の一環だと考えられます。アップルは新しい技術が成熟してから採用する傾向があり、例えば初代iPhoneは当時3Gが話題になっていた中で2Gを採用しました。アップルは既に普及している技術を使って、誰でも使いやすい製品を提供するという戦略を取っているのです。2024年の新型iPhoneがそのターニングポイントになるかどうか、市場の注目が集まっています。 生成AI普及の4つのフェーズ ――今後のM7の動向を知る上で、最も重要な点は何でしょうか 最も重要な点は、やはり生成AI(コンテンツを新たに生成できるAI)の普及です。生成AIの普及は、M7各社の事業展開や市場でのポジションに大きな影響を与えると考えられます。この生成AIの普及は大きく4つのフェーズに分けられると考えています。 第1フェーズは半導体などのインフラ整備で、エヌビディアのような企業が中心となります。第2フェーズはデバイスの普及で、AI搭載のPCやスマートフォンが登場します。第3フェーズはソフトウェアの発展で、アドビやセールスフォースのような企業がAI関連ソフトウェアを提供します。最後の第4フェーズでは、AIを活用したアプリケーションやサービスが普及し、メタやアルファベットのような企業が中心となります。 現在は第1フェーズから第2フェーズに移行しつつある段階だと認識しています。各フェーズで主役となる企業は異なりますが、それぞれの段階で投資機会が生まれると考えられます。 ただし、この変化は一気に起こるのではなく、今後3〜5年程度かけて徐々に進んでいくと予想しています。投資家の皆さんには、各フェーズの特徴を理解し、長期的な視点で投資判断を行うことをお勧めします。この動向を注視することが、M7各社の今後の成長や市場での位置づけを理解する上で非常に重要になるでしょう。 マグニフィセント・セブン(M7)に新たに加わる企業は ――M7に新たに加わる可能性のある企業候補はありますか M7の顔ぶれは固定されたものではなく、テクノロジーの進化や市場の変化に伴い、新たな企業が加わる可能性も十分にあります。特に注目されているのが、AIやバイオテクノロジーの分野で急成長を遂げている企業です。M7のくくり方自体も、今後、変わるかもしれません。 有力な投資対象の候補としては、特にバイオ関連の企業が挙げられます。新薬開発には膨大な時間と手間がかかることが知られていますが、AIを活用することでこのプロセスを大幅に効率化できる可能性が出てきました。AIは非常に多くの作業工数を必要とする分野で特に威力を発揮しますが、新薬開発はまさにその典型例と言えるでしょう。新薬開発では様々な化合物の組み合わせを試す必要があり、コンピューターシミュレーションを使っても大変な作業でした。しかし、AIを活用することでこの過程を大幅に効率化できるのです。 実際に、最近ではバイオ関連の銘柄の中で株価が大きく上昇しているものもあります。例えば、肥満症や糖尿病の治療薬を開発しているイーライ・リリーや、がん免疫療法に取り組む企業などが注目を集めています。 半導体関連企業も、業績のけん引役としての候補として挙げられます。例えば、ブロードコムのような通信用半導体メーカーです。AIの普及に伴い、データセンターや端末の需要が増加すれば、それらを接続するための半導体の需要も高まります。 また、2025年以降は、アナログ半導体やディスクリート(パワー半導体)の分野で需要が回復すると予想されています。これらの分野は、自然界の信号をデジタルに変換したり、電力を制御したりするのに不可欠な技術です。例えば、テキサス・インスツルメンツやNXPセミコンダクターズのような企業が、この分野で強みを持っています。 さらに、3D技術やVR(仮想現実)技術を提供する企業も、今後、活躍が期待されます。例えば、不動産情報を提供するコスター・グループは、3Dデジタルツイン技術を持つマターポートを買収し、不動産内覧のデジタル化に取り組んでいます。こうした技術が普及すれば、新たな顧客体験を提供する企業として大きく成長する可能性があります。 これらの企業は、現在のM7と比べると、時価総額などでみて企業規模が小さい企業も多いですが、独自の技術力やビジネスモデルなどにより、今後の成長が期待される企業群です。 なぜ巨大テクノロジー企業は米国から生まれるのか ――米国ハイテク企業の急成長を支える経営の特徴や人材戦略と、日本企業と比較した際の米国ハイテク企業の強みと特徴を教えてください まず注目すべきは、これらの企業の多様性です。M7の経営陣を見ても、さまざまな国籍の人材が活躍しています。例えば、テスラのイーロン・マスクは南アフリカ出身、マイクロソフトのサティア・ナデラやアルファベットのスンダー・ピチャイはインド出身です。エヌビディアのジェンスン・ファンは台湾系アメリカ人です。このような多様性は、世界中から優秀な人材が集まってきていることを意味しています。これは、メジャーリーグに世界中から優秀な選手が集まってきて、魅力的な野球リーグになっているのと似ています。 さらに、米国では、資金調達手段が充実していることや、スタートアップ企業が失敗しても、経営者が再チャレンジできる環境があることが挙げられます。一方、日本では事業に失敗すると、信用の回復に時間を要し、再起が難しいケースも多いです。この違いが、イノベーションへの挑戦のしやすさにつながっていると考えられます。 こうした環境の違いが、日本に比べ、米国でハイテク企業が成長している要因と考えられます。優秀な人材を世界中から集め、その人材が持つ多様な視点や経験を活かすことができる点が、米国ハイテク企業の大きな強みとなっているのです。 ※本記事において取り上げている情報につきましては、野村證券として特定の銘柄の売買等を推奨するものではございません。 野村證券株式会社投資情報部 シニア・ストラテジスト村山 誠 1990年野村総合研究所入社、1998年に野村證券転籍。エクイティアナリスト、クレジットアナリストとして勤務。2011年6月より米国株ストラテジー担当。投資環境の分析、個別株の投資アイデアを提供。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」出演中。 【野村のサマーセミナー2024開催!】生成AI普及の具体的なシナリオや、今後成長が見込まれるセクター、新たにM7に入る可能性がある企業の詳細、2024年後半の米国株式市場のリスクについて、野村のサマーセミナー2024「森永康平氏×野村のスペシャリストが議論! 米国経済と米国株から未来を探る~グローバルマーケット展望スペシャル~」で議論する予定です。 セミナーの詳細・お申し込みはこちらから ご投資にあたっての注意点
-
08/11 12:00
【投資と税金】どうする相続?高齢の親と話し合う生前対策
友人や職場の同僚から親の介護や相続の話を聞いて、ふと「うちはどうだろう?」と考えることがあると思います。8月はお盆で帰省し、久しぶりに家族が集まる時期です。親の健康状態や生活の不安など身近な悩みを聞きながら、一緒に相続の生前対策を考えてみてはいかがでしょうか。生前に準備をはじめるメリットについて、大手町トラストの税理士に伺いました。 (注)画像はイメージです。 はじめに 人生100年時代と言われている昨今、高齢になったとはいえ元気な親を見ると子どもから相続の話を切り出すのは難しいと感じられている方も多いのではないでしょうか。しかし、生前に遺産相続の対策をすることで相続税対策や納税資金を準備し、相続を円滑に進めることができます。 相続の話を切り出すタイミングは、財産を残す親が心身ともに元気なうちに行うとよいでしょう。 親が認知症を発症し、判断能力がなくなると、契約の締結や贈与などの法律行為ができなくなり、財産管理の面でも支障が生じます。また、相続人に認知症の方がいる場合は、遺産分割協議を行うことができません。回避する方法もありますが、親が認知症になってから慌てないためにも早めに話し合われるとよいでしょう。 生前に相続対策をするメリット 生前に相続対策をすることで、親が万一の時にも円滑な遺産分割を行うことができます。 また、相続人の一人が認知症を患っている場合に遺産分割協議を行うことができないとならないように、親が遺言書を作成しておくことで財産の分割が可能となります。 相続税対策 【生前贈与】生前に子や孫等に財産を贈与して相続財産を減らすこと、将来値上がりする財産・収益を生む財産を早めに贈与することは、相続税の軽減対策として有効です。 【評価額対策】不動産や未上場会社の株式などについては、生前に対策することで評価額を低くすることが可能なケースがあります。例えば、更地の土地に賃貸建物を建て賃貸することで相続税評価額を下げることができます。 【生命保険の加入】親が契約者(保険料負担者)で被保険者も親の場合、相続人が受け取る死亡保険金には、一定金額まで非課税となる「生命保険の非課税枠」が設けられています。 500万円 × 法定相続人の数※ = 非課税限度額 ※①相続税の計算上法定相続人に含めることができる養子の数には以下の制限があります。ただし、民法上の特別養子や配偶者の連れ子を養子とした場合は実子として扱われ、養子の数の制限を受けません。 ・被相続人に実子がいる場合―1人まで ・被相続人に実子がいない場合―2人まで②相続放棄をした人がいたとしても、その放棄がなかったものとした場合の法定相続人の数です。例えば、法定相続人3人のうち1人が相続放棄をしたとしても、相続税の計算においては、法定相続人は3人として 取扱います。また、法定相続人の数には代襲相続人の数も含まれます。 死亡保険金は受取人が単独で請求できますので、相続税の納税財源としても有効です。 納税資金対策-相続税の申告・納税期限 相続税は、金銭一括納付が原則です。相続税の納税は、申告期限と同様に相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。生前に所有資産を把握し、相続の際に相続税がいくらぐらいかかるのか確認しておけば、納税資金を確保しておくこともできます。 また、財産のほとんどが不動産の場合、すぐに売却することが難しいため、不要な不動産はあらかじめ処分するなどしておくとよいでしょう。 遺産分割対策-トラブルにならないために 相続対策の話をする場合は、相続人間で情報を共有することが大切です。特に気をつけたいのは子どもが複数人いて、親が同居している子どもとだけ相続の話を進めていると、子ども同士の間で知らないことが生じ、後々トラブルに発展する場合があります。 【分割しやすい財産に変えておく】相続人が複数いて不動産など分割が困難な財産がある場合、不要な不動産を売却して現金で相続するようにするなど、相続人の個々の事情などを総合的に考慮して、財産を将来分けやすい状態にしておくとよいでしょう。 【分割方法を決めておく】争族にならないために親の介護をした子どもに配慮した分割方法を決めておくなど、誰に何を残すかを遺言書に認めておくとよいでしょう。 また、分割方法を考慮する際に不動産を多く取得することが見込まれる相続人は、将来相続人自身の金融資産で相続税を納税できないことも考えられます。どのように納税するのかについてあらかじめ目途をつけておくことが大切です。 認知症になる前に 認知症を発症し、判断能力が低下すると家族信託や生命保険の契約、贈与などの法律行為ができなくなります。軽度の認知症であれば医師の診断の下で生前贈与が可能になる場合もありますが、成年被後見人になると生前贈与はできません。 また、認知症発症後に遺言書を作成する場合は、医師の診断等で意思能力があったことを示す資料がないと遺言書が無効と判断される場合があります。 生前対策で話し合うこと 生前対策を検討するにあたり、現在の財産状況の整理・親のこれからの生活や介護の希望など、検討課題は多岐にわたります。遺言書と違い法的効力は持ちませんがエンディングノートなどを使って、情報を整理していくという方法もあります。 財産の把握 「財産目録」を作成することで、相続対策や生前贈与などの計画に活用することができます。目録にはプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も明記する必要があります。 目録を作成して財産が基礎控除額を上回ることがわかった場合は、生前贈与を早めに行うことで対策をすることが可能になります。また、デジタル財産など、本人しか把握していない財産について、家族に共有することもできます。 遺言書を作成する 遺産分割を円滑に行うために遺言書を作成しておくことは有効な手段です。遺言者の意思に従った遺産分割をすることができます。 遺言書を作成する際は、全財産をリストアップするだけでなく、遺言者が今後生活していく費用、相続人の取得財産のバランス、相続税の納税などの検討が必要です。 遺言書を作成しておくことで、残された配偶者が認知症を患わっていた場合、遺言で相続させる内容を決めておけば遺産分割協議をせずに不動産や預貯金について相続手続きをすることができます。 信託を利用する 例えば、所有する賃貸マンション等を信託財産として、委託者を親、受託者を息子、受益者を親とする家族間での信託契約を締結することで、財産管理が可能となります。この場合、民法上の信託財産の所有者は、息子(受託者)となり、信託財産にかかる契約は息子が行うことができます。なお、税務上の所有者は、親のままとなるため、信託の効力発生時には贈与税はかかりません。 親の判断能力が低下する前に、本人の意思を反映できるように財産の管理・処分方法を盛り込んだ信託契約を締結することで、その信託財産の管理について、本人の意思を反映することが可能です。また、受託者に対しての報酬についても、あらかじめ契約書に定めておくことができます。 まとめ お盆や年末年始、法要など推定相続人全員が集まる機会で話を切り出すのは有効ですが、まずは、日頃からのコミュニケーションが大切です。 生前対策の話をする際は一方的に財産の話をするのではなく、親が入院した場合にどんな治療を望むのか、自宅を将来どうしたいのか、これからの人生をどのように過ごしていきたいか、子どもが親の思いを受け取るチャンスととらえて話し合われるとよいでしょう 。 この資料は情報提供を唯一の目的としたもので、投資勧誘を目的として作成したものではありません。この資料は信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、野村證券は、その正確性および完全性に関して責任を負うものではありません。この情報は、ご覧いただいたお客様限りでご利用いただくようお願いいたします。詳しくは、所轄税務署または顧問税理士等にご確認ください。 ご投資にあたっての注意点
-
08/11 09:00
【テーマ銘柄】新設相次ぐデータセンター、関連企業へ業績拡大が波及
※画像はイメージです。 旺盛なAI需要によりデータセンター新設が相次ぐ データセンター(以下DC)とは、大型のデータサーバーや通信装置を大量に設置し、データを処理・保存する専用施設です。近年、クラウドサービスの普及や旺盛なAI需要などにより、DCの重要度は更に増しています。足元ではGAFAMを中心とした海外大手インターネット企業や、国内通信大手企業が相次いで日本国内のDCへの新設や投資を発表しています。 日本にDCを置く利点 DCの稼働には非常に多くの電力が局地的に必要です。日本は関西を中心に原子力発電所を用いた安定的な電力供給が可能であり、これを理由に多くの米国大手IT企業が日本のDCへの投資を活発化させています。また、海外と通信を行う際には、そのほとんどが海底ケーブルを通じて行われます。日本にDCを置くことで、アジア諸国に海底ケーブルを敷設するための経由地点としても有利になります。加えて、経済安全保障の観点から、データを国外に持ち出すことに対して厳しい制限をかける機運が高まっています。これらを背景として、2024年6月末時点で米国大手IT企業が発表した日本国内のDCへの投資額は総額で約4兆円となり、今後も拡大していくことが予想されます。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注) 全てを網羅しているわけではない。赤字で示した金額は概算の設備投資額。HDはホールディングスの略。APLは米不動産投資・開発のアジア・パシフィック・ランドグループの略。Asa合同会社はGoogleの関連企業と報じられている。(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成 DC構築には多くの企業が関わる DCの構築には、サーバーに用いられるGPUや、GPUの高熱な排気からDC内を低温に保つための空調・冷却設備、大量に使用される電力を効率的に使用するための変圧器、停電に備えた自家発電設備やUPS(無停電電源装置)、DC内やDC間のネットワークを構築するための光ファイバーやそれを施工するための電気・通信工事事業など、関連する部材や事業者は多岐に渡ります。日本国内のDCへの投資拡大は、関連企業の業績拡大につながると期待されます。 (注)全てを網羅しているわけではない。図はイメージ。(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成 ご参考:国内データセンター関連銘柄の一例 ■サーバー ニデック(6594)サーバー用半導体の水冷式装置を手掛ける。エヌビディア(A2369/NVDA US)GPUのトップメーカーで、AI用半導体で世界トップシェアを誇る。 ■ネットワーク構築 古河電気工業(5801)海底ケーブルの遮蔽材に使用される高純度の無酸素銅で世界首位級のシェアを誇る。住友電気工業(5802)DC向けの超多心光ケーブルにおいて世界トップレベルの開発力を有する。フジクラ(5803)光ファイバー同士をつなぐ光ファイバー融着接続機において、世界トップシェアを誇る。日本電気(6701)海底ケーブルの製造や敷設を行い、世界シェア首位級を誇る。 ■ファシリティーその他 きんでん(1944)DC内の屋内線工事でトップシェアを誇り、配電設備の建設・改修も手掛ける。高砂熱学工業(1969)大量に電力を消費するDCにおいて、省エネ空調システムに強みを持つ。日立製作所(6501)送電・配電設備事業で世界トップシェアを誇り、DC内に配置する非常用発電装置なども手掛ける。富士電機(6504)DC向けの自家発電用発電機、UPS(無停電電源装置)などを手掛ける。三菱重工業(7011)原子力発電システムやガスタービンなどのエネルギー事業を手掛ける。武蔵精密工業(7220)非常用電源に使用する蓄電装置を手掛ける。関西電力(9503)稼働中の原子力発電所を複数有し、安定した電力供給が可能である。 (注1)全てを網羅しているわけではない。(注2)外国株式のコードは、野村コード/ブルームバーグコード。(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
-
08/10 19:00
【来週の米国株】「リセッション」の実現度をマクロ⇔ミクロで測る1週間(8/10)
※執筆時点 日本時間9日(金)12:00 今週:週初に急落したが持ち直し ※8月2日(金)-8月8日(木)4営業日の騰落 米国株は下落後に回復 今週の株式市場では、日経平均株価の急落が世界的な話題となりました。一方で、米国株も週前半に大幅下落しました。背景には2つの理由があると考えられます。 背景①米リセッション懸念 サーム・ルール抵触 米国株式市場の下落要因としてまず挙げられるのは、米国のリセッション(景気後退)への懸念です。米労働省が2日(金)に発表した米雇用統計が市場予想よりも弱く、特に失業率が4.3%と前月の4.1%から上昇し、2021年10月以来の高さとなりました。その結果、「サーム・ルール」(直近の3ヶ月平均失業率が過去12ヶ月間の最低水準を0.5%ポイント以上上回ると景気後退局面に入るという経験則)が満たされました。景気後退に陥らずインフレを抑える「ソフトランディング」がメインシナリオとなっていた米国株式市場で「ハードランディング」への警戒が強まり株価は下落しました。 背景②円高の急速な進行 さらに今回特徴的だったのは、通常は米国株式市場には影響を及ぼさない急激な「円高ドル安」の動きが影響したことです。一時160円を超えていたドル円相場が、8月5日には一時141円台まで円高が進行しました。ドル円は2022年の利上げ開始以降、米金利と強く連動して上がってきました。先週31日(水)には、日本銀行が政策金利の0.25%への引き上げを決定し、同日にFRBがFOMC(米連邦公開市場委員会)で政策金利の据え置きを決定しました。日米金利差の縮小観測が強まることで生じた円高が円キャリー取引(低金利の円を調達して高金利のドルや上昇期待の高い米国株などで運用する取引)の巻き戻しを喚起し、円高と米国株の下落を更に助長する形となり、世界的なリスクオフに繋がりました。 小康状態となっている理由 週後半に米国株式市場は一旦落ち着きを取り戻しました。日銀の内田副総裁が「金融市場が不安定な状態で利上げは行わない」と発言したことなどで、円高圧力が後退するともに円キャリー取引の巻き戻し懸念が緩和されたものと見られます。8日(木)時点ではドル円市場は1ドル=147円台まで回復しました。 また、米国株主要3指数は前週末終値と近い水準まで戻しています。5日(月)に発表された7月のISMサービス業景況感指数は51.4(前月の48.8)と持ち直したうえ、8日(木)発表の週間新規失業保険件数が市場予想を下回ったことから、7月雇用統計が示したほどには米国の労働市場は悪化していないとの見方に繋がり、市場には安心感が広がっています。 来週:経済の強さを測る1週間 来週は、経済指標などのマクロと、決算発表などのミクロ、両面で経済の強さを測る1週間となりそうです。 来週の注目①経済の強さをみる指標 引き続き米国株下落の“震源”となった、米国のリセッション(景気後退)入りの警戒感が正当化されるかに注目が集まります。経済指標では、従来は7月CPI消費者物価指数(14日(水)発表)などインフレ統計が注目を集めましたが、今週は7月小売売上高(15日(木))など実際の経済活動を示すハードデータへの関心が高いと思われます。小売売上高では、業種別の売上動向をチェックし、米国個人消費の状況を把握していきたいと考えます。 来週の注目②経済の強さを見る決算発表 米国経済を考える上で、GDPの7割を占める消費の動向を確認できる大手小売企業の2024年5-7月期決算発表に、いつも以上に注目が集まりそうです。13日(火)にはホーム・デポ、15日(木)のウォルマートに注目が集まります。高まる局面といえそうです。13日(火)にはホーム・デポ、15日(木)のウォルマートに注目が集まります。 来週の注目③半導体株には徐々に注目度が高まる また、15日(木)には、半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズの5-7月期決算が発表されます。今週の日本の企業決算でも東京エレクトロンやKOKUSAI ELECTRICなど半導体製造装置大手がこれまで軟調だったメモリー向けの好調を示唆しました。 少し先となりますが、28日(水)にはエヌビディアの決算発表も控えており、市場全体が落ち着けば業種や個別銘柄へも関心が戻ってくると推察されます。 (編集:野村證券投資情報部 小野崎 通昭) ご投資にあたっての注意点 要約編集元アナリストレポートについて 野村オリジナル記事の配信スケジュール
-
08/10 12:00
【特集】急激な円高・ドル安をもたらした3つの波 野村證券ストラテジストが解説
円高ドル安を促した3つの波 2024年半ば以降も米ドル円相場では円安基調が続き、7月11日には一時161円台まで円安ドル高が進行しました。その後は一転して円高基調へ転じ、8月5日の取引時間中には141円台を付けるなど、およそ1ヶ月の間に20円近く円高になりました。円高ドル安を促した要因の第1波は7月11、12日に実施されたと目される本邦通貨当局による円買いドル売り介入です。続く第2波は7月会合に向けた日銀の利上げ観測と7月会合を経て高まった日米金利差の縮小観測、第3波に米国の景気後退懸念を背景とした世界的な株安を挙げることができます。 ドル円急落の背景に投機資金のポジション調整 日銀は7月30-31日に開催した金融政策決定会合で、市場コンセンサスに反して利上げを決定、植田総裁は「引き続き金利を上げていく」と発言するなど、タカ派(利上げに積極的)な姿勢を示しました。 一方、FRB(米連邦準備理事会)は同日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で予想通り政策金利を据え置きました。パウエルFRB議長は会合後の記者会見で「早ければ9月に利下げが可能になる」と発言しましたが、その後に公表された主要な経済指標が市場予想を下振れたことを受けて、市場では米国の景気後退懸念が台頭、ハイテク関連企業の業績への失望も相まって主要株価指数が大きく下落しました。 結果、米ドル円相場は7月11日に付けた161円台から8月5日の141円台まで、わずか1ヶ月余りの間に20円も円高が進行する事態となりました。 短期間の間に円急騰をもたらした資本フローとして、第1に投機筋による円売りドル買いポジション(建玉)の巻き戻しが挙げられます。投機筋の通貨に対する投資ポジションを示すシカゴ通貨先物市場のドル円投資ポジションを見ると、2024年7月2日は約2.4兆円と1999年以降では最大規模に積み上がっていた円売りポジションが、7月30日時点には約9,700億円まで取り崩されています。日米金利差を背景に積み上げられた円売りポジションの解消過程で生じた強力な円買いがドル円相場の下落につながったと見受けられます。 円キャリートレードの巻き戻しも円高に寄与 第2に円キャリートレードが挙げられます。円キャリートレードは、主に機関投資家やヘッジファンドなどが低金利の円を調達して、相対的に金利の高い通貨で運用する取引を指します。外国銀行の在日支店から海外本店への貸付額と米ドル円相場の関係を見ると、両者の間には比較的高い正の相関関係があることが確認できます。 円で調達された資金は、通常、米国債などで運用されていると想定されています。しかし、近年では好調であった米国株にも相当程度の資金が振り向けられていたと見られます。このため、米国株の下落が円高につながり易い状態にあったと想定されます。 日米金利差の縮小ペースに注目 投機筋による通貨先物ポジションにせよ、円キャリートレードにせよ、いずれも基本的には日米金利差に依拠した投資ポジションであることから、ポジション調整一巡後は再び日米金利差の行方を念頭に投資ポジションが形成されることが予想されます。 野村證券では7月の金融政策決定会合を受けて日米の金融政策見通しを変更しました。パウエルFRB議長が9月FOMCでの利下げ実施を示唆した背景には、インフレ高止まりリスク以上に、労働市場の冷え込みを背景とした景気悪化懸念があると見受けられます。この点を踏まえて野村證券では、24年中の米国の利下げ見通しを2回(9月、12月)から3回(11月を追加)へ変更しました。 日本銀行は7月の決定会合で利上げを実施し、植田総裁は過度の金融緩和策の是正に積極的な姿勢を示しました。日銀の金融政策に関して野村證券では、従来の据え置き見通しから、24年中に1回(12月会合を有力視)、25年中に2回(4月、7月)の利上げへと変更しました。 野村證券では、短期的には一段の円高リスクが残ると判断し、24年9月末のドル円見通しを143円へ下方修正しました(前回は150円)。ただし、米国経済後退局面入りと断定するのは時期尚早であり、24年10-12月期にはトランプ氏勝利を織り込んだドル高圧力再燃の可能性も残るため、現段階では24年12月末の予想は148円で据え置きました。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) ご投資にあたっての注意点
-
08/10 07:30
【特集】令和のブラックマンデー、全治半年の見込み
※画像はイメージです。 2024年前半の日本株市場は、日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)がそろって34年ぶりに史上最高値を更新するなど順風満帆の相場展開を見せていましたが、年後半に入って暗転しています。日銀のタカ派(利上げに積極的)化懸念と米国の景気下振れリスクに加え、それらに伴う円高加速への警戒感が市場で強まった結果、8月に入って歴史的な急落に見舞われました。 日経平均株価は、今年7月11日高値からわずか1ヶ月弱で1万円を超える大幅下落となり、8月5日(月)には前営業日比で4,451円安(12.40%安)の歴史的な急落となりました。1営業日の騰落としては、1987年10月20日のブラックマンデー(3,836円安)を上回る歴代1位の下落幅で、下落率はブラックマンデーの14.90%安に次ぐ歴代2位となります。 その一方で、各種テクニカル指標が軒並み極端な売られ過ぎを示唆する水準まで低下したことから、翌6日以降は自律反発に転じています。8月6日は一転して歴代1位の上昇幅(上昇率では歴代4位)となる前営業日比で3,217円高 (10.23%高) の過去最大となる急反発となりました。過去の歴史的な急落時は、その後に歴史的な急騰がワンセットになっているケースがほとんどです。当面は上下に値動きの荒い相場展開を覚悟する必要がありそうです。 今年7月以降の株価急落と、1987年のブラックマンデーや2008年のリーマンショック、2020年のコロナショック等の過去の急落局面とその後の株価の推移を見てみましょう(下図)。一番深く、長い調整となったのはリーマンショック後の調整ですが、当時は金融危機と呼ばれる状況で、深刻な信用収縮も起こっていました。一方、ブラックマンデーやコロナショック時の株価の動きはどうだったのでしょうか。両ケースともに直前の高値から1ヶ月前後で大底をつけ、その後は一時上値を抑えられる局面はあったものの、半年程度で急落前の高値前後まで値を戻しています。 過去の経験を参考とすれば、今回は、米国や日本で金融危機や信用収縮は発生しておらず、後者のパターンに当てはまりそうです。この先、8月中は引き続きボラタイルな展開が続く可能性はありますが、時間の経過とともに徐々に下値を固めていくとみられます。その後は、戻り待ちの売りをこなしつつ、年末に向けて本格的な戻り相場入りとなることが期待されます。 テクニカル分析は過去の株価・為替等の値動きを分析・表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。また、記載されている内容は一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 ご投資にあたっての注意点
-
08/10 07:00
【来週の予定】景気後退懸念を受けて米ハードデータへの注目が高まる
来週の注目点:米国・中国のハードデータと日本の4-6月期実質GDP 米国の景気後退懸念に端を発した世界的な株安は、急速な円高を伴って日本株を直撃しました。日経平均株価は8月5日に急落した後、6日は反発しましたが変化幅、変化率とも歴史的な変動を記録しました。7日に内田日銀副総裁による「市場が不安定な状況では利上げしない」旨の発言を受けて、日経平均は一旦、落ち着きを取り戻しています。 今週の米国では13日(火)に7月生産者物価指数、14日(水)に7月消費者物価指数が発表されます。これまではインフレ鎮静化が利下げ要件と見られてきましたが、景気後退懸念を受けて重要度は低下していると見ています。景気の先行きを予想する上では、15日(木)の8月NY連銀およびフィラデルフィア連銀の製造業景気指数、16日(金)の8月ミシガン大学消費者マインド(速報値)などの景気に対して先行性のあるサーベイデータに加え、7月小売売上高、7月鉱工業生産(いずれも15日発表)、7月住宅着工・建設許可件数(16日発表)など、実際の経済活動を計測したハードデータが注目されます。 中国では15日(木)に7月小売売上高、鉱工業生産、1-7月固定資産投資、不動産投資と重要な月次のハードデータが発表されます。製造業の在庫調整は順調に進展していることから、中国経済の先行きを巡っては個人消費と不動産市況の動向が注目点です。 日本では15日(木)に4-6月期の実質GDP(1次速報値)が発表されます。1-3月期は前期比年率-2.9%と大幅に落ち込みましたが、主因は能登半島地震などの外生的・一時的要因であったことから市場ではリバウンドが予想されています。野村證券では、輸出や民間消費、民間企業設備投資、公共投資等が実質GDP押し上げに寄与する一方、輸入や民間在庫が押し下げに寄与する結果、4-6月期は同+0.9%成長にとどまると予想しています。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) (注1)イベントは全てを網羅しているわけではない。◆は政治・政策関連、□は経済指標、●はその他イベント(カッコ内は日本時間)。休場・短縮取引は主要な取引所のみ掲載。各種イベントおよび経済指標の市場予想(ブルームバーグ集計に基づく中央値)は2024年8月9日時点の情報に基づくものであり、今後変更される可能性もあるためご留意ください。(注2)画像はイメージです。(出所)各種資料・報道、ブルームバーグ等より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点