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06/25 16:16
【野村の夕解説】円安メリット株が牽引し、日経平均株価は続伸 (6/25)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 本日の日経平均株価は前日比29円高の38,833円で取引を開始しました。前日の米国株式市場で半導体株が続落したことから、日本株市場でも東京エレクトロンやディスコ、レーザーテック等が下落しました。一方で、為替相場では1米ドル=159円台が維持され、円安・米ドル高が基調的に進んでいるとみられたことから、円安による業績上振れが期待されるファーストリテイリングやトヨタ自動車等が上昇し、相場をけん引しました。また、昨日発表された日銀決定会合の主な意見などで、金融正常化への期待感が高まったことから銀行、保険、証券など金融関連セクターも値上がり上位業種に名を連ねました。日経平均株価は取引時間を通して上昇を続け、前日比368円高の39,173円で本日の取引を終了しました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 本日、米国でS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数が発表されます。米国消費者物価指数への寄与度が高い帰属家賃に先行する経済指標とされており、米国の足元のインフレ圧力を見極める上で注目されます。 (野村證券投資情報部 秋山 渉) ご投資にあたっての注意点
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06/25 09:30
【銘柄特集】PBRが低位かつ、業績と流動性の不安が少ない銘柄(6/25)
(注)画像はイメージ。 今期中に自己資本が毀損するリスクの低い低PBR銘柄をスクリーニング PBR(株価純資産倍率)は、株価をBPS(1株当たり純資産)で割ったもので、現在の企業価値が手持ちの資産の何倍に評価されているかを示す指標です。PER(株価収益率)と同様に、株価が割安か割高かを判断するための代表的な指標となっています。 PBRの高い銘柄は割高に見えますが、業績の安定性、利益成長への期待の高さを反映しているとも言えます。言い換えると、PBRの低い銘柄、とりわけ帳簿上の解散価値と同義である1倍を大きく割れている銘柄は、将来的に自己資本が毀損するリスクがあると市場から評価されていることになります。 以下の表では、2024年6月7日の株価・データをもとに、業績や流動性の面で不安が少ないと考えられる銘柄(少なくとも今期自己資本が毀損するリスクの低い銘柄)の中から、PBRの低い銘柄を抽出しています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)諸般の事情により特定の銘柄をリストから削除している場合がある。HDはホールディングス、FGはフィナンシャルグループ。株価、業績予想数値はいずれも2024年6月7日時点。1株当たり配当の予想は東洋経済新報社で予想値がレンジの場合、下限値。その他の予想は野村證券エクイティ・リサーチ部。PERは2024年度基準。PBRは直近実績基準。ROEは今期予想税引き利益と、直近実績の自己資本額の比率。経常増益率は、野村證券予想に基づく2024年度経常増益率。三井住友FGは2024年9月30日を基準日として1:3の株式分割を行う予定。1株当たり配当は株式分割調整後の数値。(出所)東洋経済新報社、野村證券市場戦略リサーチ部、野村證券エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 エクイティ・コンテンツ課) ご投資にあたっての注意点
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06/25 08:50
【野村の朝解説】NYダウ上昇も半導体関連が下落(6/25)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 総じて、目立った材料がない中で、米国市場ではテクノロジー関連企業が軟調に推移し、一方でNYダウ組み入れ銘柄に代表される企業の上昇が目立つなど、セクター・ローテーション(業種の入れ替え)の色彩が強い1日となりました。ドイツで発表された6月ifo企業景況感指数は88.6と、前月の89.3を下回りました。イスラエルを取り巻く中東情勢が緊迫化するとの見方から、WTI原油価格が上昇し、米国株式市場ではエネルギーセクターが押し上げられました。この他、主要11業種中、公益事業、生活必需品、金融などの上昇率が高くなりました。一方、アマゾンを含む一般消費財サービスが-0.74%、情報技術が-2.07%と、2業種のみ下落となりました。これまで上昇が続いてきた半導体関連を中心にテクノロジー株が大きく下落し、個別銘柄では半導体大手エヌビディアが-6.68%、アーム・ホールディングスが-5.76%、クアルコムが-5.50%、ブロードコムが-3.70%、ASMLホールディングが-3.34%となりました。 相場の注目点 米国で半導体関連を中心にテクノロジー関連株が下落したことから、本日の日本株市場でも半導体関連企業の株価は上値の重い状況が予想されます。一方、24日の米国における日本株のADR(米国預託証券)では、上昇している銘柄も幅広くあることから、寄り付きの下げ余地は大きくないとみられます。 本日のイベント 本日、経済統計は日本で8:50に5月企業向けサービス価格指数、23:00には米国で6月消費者信頼感指数などの発表があります。また、日本で日本オラクル、スギホールディングス、米国ではフェデックスの決算発表があります。 (投資情報部 小髙 貴久) (注)データは日本時間2024年6月25日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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06/24 19:00
【週間ランキング】日本株の値上がり/値下がり銘柄は?(6月第3週)
※画像はイメージです。 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(上位) 2024年6月第3週(2024年6月14日~6月21日) 2024年6月月間(2024年5月31日~6月21日) 2024年年間(2023年12月29日~2024年6月21日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2024年6月21日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(下位) 2024年6月第3週(2024年6月14日~6月21日) 2024年6月月間(2024年5月31日~6月21日) 2024年年間(2023年12月29日~2024年6月21日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2024年6月21日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 <参考>今週の日本株式市場パフォーマンス 主要指数 TOPIX: 東証33業種 (注)業種分類は東証33業種ベース。直近値は2024年6月21日時点。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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06/24 15:59
【野村の夕解説】日経平均株価、円安を背景に反発 (6/24)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 前週末の米国市場では、半導体関連株が重石となりS&P500指数とNASDAQ総合は小幅に下落しました。この流れを受け本日の日経平均株価は前週末比99円安の38,497円で取引を開始しました。寄り付き前には日銀金融政策決定会合における「主な意見」が公表され、国債買い入れの減額について議論の様子が明らかになりました。市場はこれを、日銀の政策正常化における前のめりな姿勢はみえないと受け止め、外国為替市場は前週末からやや円安に振れ、一時1米ドル=159円94銭付近とおよそ2か月ぶりの水準となりました。円安を足掛かりに日経平均株価は輸出関連企業を中心に上昇に転じ、その後も下値は堅い動きが継続しました。後場に入ってからは、円安以外の新しい材料は見られなかったものの前場の流れを引き継ぎ上げ幅を拡大させ、後場中ごろには日経平均株価は一時前週末比300円高となりました。大引けは前週末比208円高の38,804円と反発して本日の取引を終えました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注)データは15時15分頃。ドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 米国では、25日(火)に6月消費者信頼感指数(コンファレンスボード)、26日(水)に5月新築住宅販売件数が発表されます。FRB(米連邦準備理事会)の今後の政策方針を占う上で個人消費の現状などに注目です。 (野村證券投資情報部 清水 奎花) ご投資にあたっての注意点
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06/24 09:30
【銘柄特集】配当利回りが魅力的かつ、業績と流動性の不安が少ない銘柄(6/24)
(注)画像はイメージ。 業績や流動性の面で不安が少ない高配当銘柄をスクリーニング 配当金は、企業の価値(株価)を決める重要な指標であり、株式投資の魅力のひとつです。配当利回りは、投資した金額に対して受け取れる予想配当金の割合を示したもので、PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)と同様に、株価が割安か割高かを判断するための指標でもあります。 予想配当利回りが高ければ高いほど、少ない投資額で受け取れる配当金は大きくなります。ただし、配当の源泉は企業利益であるため、対象企業の業績悪化により減配・無配となってしまうケースもあります。 以下の表では、2024年6月7日の株価・データをもとに、業績や流動性の面で不安が少ないと考えられる銘柄の中から、通期配当利回りが高い銘柄を抽出しています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)諸般の事情により特定の銘柄をリストから削除している場合がある。MS&ADはMS&ADインシュアランスグループホールディングス。株価、業績予想数値はいずれも2024年6月7日時点。1株当たり配当の予想は東洋経済新報社で予想値がレンジの場合、下限値。その他の予想は野村證券エクイティ・リサーチ部。PERは2024年度基準。PBRは直近実績基準。ROEは2024年度予想税引き利益と、直近実績の自己資本額の比率。経常増益率は、野村證券予想に基づく2024年度経常増益率。ソフトバンクは2024年9月30日を基準日として1:10の株式分割を行う予定。1株当たり配当は株式分割調整後の数値。(出所)東洋経済新報社、野村證券市場戦略リサーチ部、野村證券エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 エクイティ・コンテンツ課) ご投資にあたっての注意点
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06/24 08:48
【野村の朝解説】米国株は動意薄、進む円安に注目(6/24)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 前週末の米国株式主要3指数は、NYダウが前日比+0.03%、S&P500は同ー0.15% 、ナスダック総合は同ー0.18%となりました。21日に発表された6月S&PグローバルPMIは製造業、サービス業ともに市場予想を上回る内容でした。景気の底堅さが示されNYダウは小幅上昇となった一方で、高値警戒感からフィラデルフィア半導体株(SOX)指数は前日比ー1.27%となるなどハイテク株では下げが目立ち、S&P500やナスダック総合は小幅に下落しました。米ドル円相場は日本時間21日15時の1米ドル=158円90銭台から米ドル高円安が進行し、159円70銭前後(日本時間24日7時)で推移しています。 相場の注目点 4月後半以降、日経平均株価は概ね38,000円~39,000円のレンジでの推移を続けています。本日は、米国ハイテク株安を受け、日本の半導体関連株は下値を試し、日本株の重石となると想定される一方で、進行する米ドル高円安が輸出関連株の追い風となり、株価の下支えとなるか注目されます。 本日のイベント 8:50に、6月日銀金融政策決定会合における主な意見が公表されます。円安に対する評価や追加利上げに向けた姿勢、国債購入減額ペースに関する議論など7月会合に向けた利上げ観測再燃につながるような意見の有無が、米ドル円相場にどう影響するのか注意したいと思います。 (投資情報部 神谷 和男) (注)データは日本時間2024年6月24日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 野村オリジナル記事の配信スケジュール ご投資にあたっての注意点
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06/23 12:00
【テーマ銘柄】日本の連続増配企業
※画像はイメージです。 連続増配企業への投資が注目される 株式市場は時折、様々なリスクにより大きな変動を余儀なくされます。2008年のリーマンショックをはじめ、近年では、2020年の新型コロナ感染拡大や2022年のウクライナをめぐる紛争により、株価は大きな影響を受けました。こうした中、長期的な視点で安定的な配当を得ることを目指す連続増配企業への投資が注目されます。 連続増配企業の強みと企業例 連続増配企業は社歴の長い企業も多く、ブランド力や技術力等を武器に、安定的な利益を創出しうる独自の経営スタイルや販売手法を培い、様々な景気変動や各種のショックを乗り越えてきました。そのため、単年度では減益に陥ることがあっても継続的な配当を続ける実力があり、市場で評価され続けています。その代表格として、花王が挙げられます。同社はトイレタリー国内首位で、日本企業で最長の連続増配年数を維持しています。コーポレートガバナンスやESGに関する情報開示にも積極的で、長期成長を見据えた経営姿勢を明確にしています。 (注1)直近値は2024年5月24日。この結果は過去のものであり将来を保証するものではない。(注2)連続増配銘柄の合成指数は、2024年5月24日時点で時価総額4,000億円以上、21期以上連続増配している銘柄を等金額投資ベースで計算したもの。連続増配銘柄とは、花王、三菱HCキャピタル、ユー・エス・エス、リンナイ、シスメックス、ユニ・チャーム、東京センチュリー、KDDI、サンドラッグ、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス。(出所)野村総合研究所、日本経済新聞社より野村證券投資情報部作成 連続増配企業のパフォーマンス 時価総額4,000億円以上、かつ今期会社予想を含め21期以上連続で増配している10銘柄の合成株価指数(等金額)のパフォーマンスは、長期的な視点でみれば日経平均株価を大幅に上回る傾向がみられます。2024年度の日本企業の企業業績は、5期連続の経常増益が予想されており、企業の株主還元拡大の余地は大きいと考えられます。近年では、資本の収益性を意識した経営を強める企業も増加しており、長期的な視点で、連続増配企業への投資が注目されます。 (注1)2024年5月24日時点。投資情報部の判断により、全ての銘柄を記載しているわけではない。(注2)今期会社予想を含めて連続して増配している企業のうち(ユニバースはREIT(上場不動産投資信託)を含む全上場銘柄)、2024年5月24日時点で時価総額4,000億円以上、かつ今期会社予想を含め21期以上連続増配している企業の例。前期と今期予想(最小値)が同じ場合も増配とカウントした。復配や配当開始は回数に含まず、決算期変更を実施した企業も対象に含む。上場以前の配当実施額、資本異動については、完全に網羅されていない可能性がある。(注3)将来の増配を保証するものではない。HDはホールディングスの略。(出所)野村総合研究所、日本経済新聞社、会社資料より野村證券投資情報部作成 ご参考:日本連続増配企業の一例 花王(4452)国内トイレタリーの最大手である。衣料用・住宅用洗剤、おむつ・生理用品などに加え、化粧品・ヘアケアなど幅広い事業を展開する。主要ブランドには、ビオレやアタック、マジックリン、メリーズなどがある。ユー・エス・エス(4732)中古自動車取扱事業者を会員とする中古自動車オークションの国内最大手である。2023年のオートオークション市場での出品台数シェアは約4割と業界首位である。リンナイ(5947)ガス給湯器、ガスコンロなどガス機器のトップメーカーである。中国や韓国、米国、豪州、アジア各国で現地生産、現地販売の方針をとっており、海外が業績を牽引する。シスメックス(6869)臨床検査機器の中でも血液学(血球計数検査=全血球計算=血算、血液凝固検査)分野の世界トップメーカーである。ヘマトロジー(血球計数検査)や血液凝固検査、尿検査等で世界売上シェアトップである。パン・パシフィック・インターナショナルHD(7532)「驚安の殿堂」をキャッチフレーズに深夜まで営業する総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を運営している。仕入れから価格設定、商品構成、陳列に至るまで現場に権限を委譲し、顧客ニーズ等に合わせた迅速な対応を可能にしている。ユニ・チャーム(8113)子供用・大人用紙おむつ、生理用品、ペットケア、マスク、ウェットティッシュなど不織布・吸収体製品を製造販売する。主要ブランドには、ムーニーやマミーポコ、ソフィ、ライフリーなどがある。アジア中心に高いシェアを有する。東京センチュリー(8439)情報通信機器に強みをもつ大手リース会社である。伝統的リース事業に留まらず、スペシャルティ事業やオート事業といった専門性の高い事業を営んでおり高い収益性を誇る。三菱HCキャピタル(8593)2021年4月に三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の三菱UFJリースと日立製作所傘下であった日立キャピタルが合併して誕生した大手リース会社である。KDDI(9433)総務省統計では、2023年12月末の移動通信系契約数の市場シェアは約31%である。CATVを含む固定系ブロードバンド契約数の市場シェアは約20%(卸を含む)、IP電話を含む固定電話契約数は約22%となっている。サンドラッグ(9989)「サンドラッグ」などのドラッグストアを全国規模で展開する大手小売チェーンである。ディスカウントストア「ダイレックス」も手がける。全店舗・物流・ベンダー(メーカー、卸)を結ぶ業界最大級の物流・配送システムがローコストオペレーションを支える。 (注)全てを網羅しているわけではない。HDはホールディングスの略。(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成 (野村證券投資情報部 寺田 絢子) ご投資にあたっての注意点
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06/23 09:00
【特集】『東証要請』の進捗度(後編):株主還元/政策保有株/事業再編の最前線
※画像はイメージです。 2023年度 総還元性向は低下 (22日配信「【特集】『東証要請』の進捗度(前編):ROEは向上したか?」より続き) まずは『東証要請』に対し、対策が進んでいると見られる、WACC(加重平均資本コスト)を意識した資本構成実現に不可欠な、株主還元(配当、自社株買い)について確認しましょう。 2023年度のラッセル野村Large Cap(除く金融)の総還元性向(配当+自社株買い)は50%と、2022年度の55%に比べ低下しました。なお、総還元性向の低下は、もっぱら税引利益の増加によるもので、総還元額は2022年度に比べて増加しています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 (注)S&P500、およびラッセル野村Large Capの税引利益に対する配当、自社株買い、内部留保の比率の推移。各々の比率の小数点以下は四捨五入してあるため、合計しても100%にならない場合がある。2019年度の日本の総還元性向(自社株買い+配当)が上昇しているのは、自社株買い、配当を企業が増やしていることと、税引利益が減益であったこと、などが要因。集計時点や集計方法の違いにより、当レポートに掲載している他の図表と数値が異なる場合がある。(出所)野村證券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成 配当については、2023年度の配当性向は34%と、トレンドから逸脱するものではありませんでした。減配は投資家が嫌うイベントの一つであり、企業側も大幅な配当性向の引き上げを躊躇したと考えられます。対して自社株買いは、配当に比べ機動的にその額を決定することが可能で、2023年度の自社株買い設定枠は9.9兆円と、それまで最高であった2022年度の9.3兆円を大きく上回りました。 (注)対象は全上場銘柄の普通株式。各年度の4月からの累積額。(出所)QUICKより野村證券市場戦略リサーチ部作成 ただ、現在の日本企業のROE(自己資本利益率)10%前後に対して、50%前後の総還元性向では自己資本の積み上がりを抑制するには不十分で、2023年度は2桁の税引増益を達成したにもかかわらず、ROEは前年度比ほぼ横ばいに留まりました。米国並みとは行かないまでも、ROEの維持/向上のためには総還元性向の引き上げが急務といえるでしょう。 常識外れのスタートとなった2024年度 5月末時点の自社株買い設定枠は7兆円と、過去最高を大きく更新しています。日本企業も自己資本の積上がりの抑制に本格的に取り組み始めたと見られます。また、業績の変動性が相対的に低い医薬品や商社などを中心に、還元性向を引き上げる動きが増えています。東証の要請を受けた事業ポートフォリオの見直しなどにより業績の安定性が改善する企業が増加すれば、企業が目標とする還元性向の中央値が切り上がる可能性が期待できます。 加速する政策保有株削減の動き 日本企業のROE停滞の要因の一つに、資産回転率の趨勢的な低下が指摘されています。資産回転率の向上には、事業ポートフォリオの見直しが不可欠です。ここでは事業ポートフォリオの見直しを、①政策保有株の見直しと、②不採算部門の見直しや新規投資およびM&A、に分けてみてゆくことにしましょう。 政策保有株の見直しに関しては、2023年度より企業側が動きを本格化させていることはほぼ確実と思われます。現時点で、2023年度末の各企業の政策保有株の詳細のデータが明らかでないことや、2024年5月に金融庁が「政策保有株の情報開示が実態を反映していない」可能性を問題視するなど、政策保有株の正確な実態は不明です。 ただ間接的な手段となりますが、政策保有株を保有する事業会社からの(株式)売り付け額の推移をみると、2023年度の売り付け累計額は11.2兆円とこれまでの最高額であった2021年の8兆円を大きく上回っています。2024年度も前年同期に比較して3割増のペースで売り付けられており、政策保有株の削減の動きは継続しているとみてよいでしょう。 (注)データは週次で、2024年度の直近値は2024年5月第4週。事業法人の売り付け額すべてが持ち合い株解消や政策保有株の売却を指すわけではない。(出所)東京証券取引所より野村證券投資情報部作成 緩やかに増加に転じた日本企業のM&A 政策保有株の削減に比べ、事業ポートフォリオの見直しの進捗はやや緩慢に映ります。政策保有株の削減は、(例外はあるにせよ)当該企業の決断で可能であるのに対し、不採算部門の見直しやM&Aの場合には相手企業が存在する確率が高く、最終決断に至るまでに時間が必要、という事情も存在すると考えられます。 ただ足元で、M&A、なかでもIN-IN取引、すなわち日本企業同士のM&Aは件数、金額ともに、緩やかながら増加基調にあり、企業が不採算部門の見直しや新規投資、M&Aに対して積極的な姿勢に転じつつあることがうかがえます。 (注)データは四半期ベースで、直近値は2024年1-3月期。(出所)Bloomberg、野村證券市場戦略リサーチ部より野村証券投資情報部作成 金融環境の変化も事業再編を促す 金融環境の急速な変化も、企業の事業ポートフォリオの見直しを加速させることが期待されます。わが国では、2022年12月に日銀がYCC(イールドカーブ・コントロール)運用の柔軟化に踏み出して以降、金融政策正常化への動きが続いています。これに連動して、リスクフリーレートも上昇基調をたどっています。2022年度に0.4%弱に過ぎなかった(期中平均)リスクフリーレートは、2023年度には0.66%に上昇しており、2024年度は更に上昇することはほぼ確実です。リスクフリーレートの上昇は、WACCの上昇に直結します。こちらも上昇が継続することが見込まれます。 一方、ROIC(投下資本利益率)は、堅調な業績を背景に上昇基調を辿ることが見込まれます。これまで日本企業は外部環境の変化に脆弱で、金利とROICが逆相関となることが頻繁にありましたが、今回の金利上昇局面では、(欧米企業と同様に)金利上昇=ROICの向上というメカニズムが機能し始めているようです。 ただ、ROIC上昇の動きはやや緩慢で、株価が上昇(益利回りが低下)していることもあり、リスクフリーレート/WACC/ROIC/(自社株買いの判断材料となる)株式益利回りの各々のスプレッドは縮小傾向にあります。 WACCに対してROICが十分なバッファーを確保するためにも、企業には収益性の低い事業部門の比率を低め、全体としてのROICの底上げを目指す、といった施策が望まれます。 (注1)WACC(加重平均資本コスト)とROIC(投下資本利益率)はラッセル野村Large Cap(除く金融)のもの。リスクフリーレートは、10年債パーイールドの各年度ごとの期中平均。WACCは、D/(D+E)×Rf×(1-t)+E/(D+E)×(Rf+Rp)。ただし、Dは有利子負債、Eは自己資本、tは税率、Rfは10年債パーイールドの期中平均、Rpはイールドスプレッドとした。ROICは、NOPAT/IC。ただし、NOPATは、営業利益×(1-税率)。ICは、自己資本+有利子負債。株式益利回りは、ラッセル野村Large Capのもの。(注2)データは年次で、直近値はいずれも2024年度の予測・暫定値(2024年6月19日時点)。2024年度のリスクフリーレート、およびWACCの計算に用いるリスクフリーレートは、6月19日時点の実績値。(出所)野村證券市場戦略リサーチ部などより野村證券投資情報部作成 想定以上に素早い企業の動き これまで、ROEの停滞を企業側も問題視しており、自社株買いの増額や、政策保有株の売却などの具体的なアクションが想定以上に出足が速いこと、事業ポートフォリオの見直しに関してもその兆しを感じられるような変化が出始めていることを明らかにしてきました。こうしたアクションを公表する企業は増え続けており、5月末の段階で7割を超える企業から、何かしらの対応が示されています。 (出所)東京証券取引所資料より野村證券投資情報部作成 なぜ企業は前向きなのか? なぜ、これまで掛け声倒れに終わることが多かった、企業行動変革の動きが、今回は想定を上回るほど速く、また多くの企業が取り組むことになったのでしょう?これはROE上昇のために、①中期経営計画や決算短信などで中期的な定量目標を示し、②各年度の業績見通しおよび配当/自社株買い計画との間で整合性をとること、を促す仕組みが機能していることに起因していると考えられます。 (注)DOEは株主資本配当率(Dividend on Equity ratio)。PBRは株価純資産倍率。(出所)東京証券取引所資料などをもとに野村證券投資情報部作成 さらに、2023年12月より、東証要請に取り組む企業の固有名詞の公表がスタートし、さらに毎月アップデートするという取り組みも企業の背中を押すことにつながっていると考えられます。 『要請』の先に株式市場で起こること 最後に、企業が資本効率/事業ポートフォリオ改善に継続的に取り組むことが定着した世界において、株式市場ではどういった変化が起きるかについて考えてみることにしましょう。これまで日本は先進国の中で、『ROEのファクター効果が持続しない』ほぼ唯一の国でした。これは、ROEの水準がそもそも低く、頻繁にROEが株式の期待収益率を下回ってしまうという業績の不安定性に起因すると考えられます。また、企業経営者にとってROEの維持/向上という命題の優先度が低かったことも指摘できるでしょう。『東証要請』により、日本企業の行動パターンが変化したという認知が拡がるにつれ、今後は日本でもROEのファクター効果が明確になる可能性があります。 (注1)ROEのファクター効果は、最もROEが高い銘柄群(上位20%)の買いと、低い銘柄群(下位20%)の売りのリターンスプレッド。1989年末を起点にした月次ベースの累積パフォーマンス。直近値は2024年5月末。(注2)母集団は日本(MSCI-Japan)、米国(MSCI USA)。日本を除く先進国(MSCI KOKUSAI)(出所)野村證券市場戦略リサーチ部 (野村證券投資情報部 伊藤 高志) ご投資にあたっての注意点