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2023/10/03 09:30
【業界展望】家電・精密セクターの投資視点
家電製品の需要は低調な推移が続く テレビ、スマホ、パソコンなど民生用エレクトロニクス製品の需要は低調な推移が続いている。巣ごもり需要の反動減に加え、インフレ影響による低所得者層の支出抑制が広がっており、ゼロコロナ政策解除後の中国市場の動きも鈍い。 4~6月期決算では、供給制約の解消後に生じたペントアップ需要の落ち着きが見られた。ソニーグループのプレイステーション5の販売台数は前四半期比で48%減の330万台となった。セイコーエプソンのインクジェットプリンター、富士通ゼネラルの空調機、ヤマハの電子楽器などでも需要が低調だった。そんな中、デジタルカメラに関しては好調な販売を維持し、富士フイルムホールディングスやキヤノンのイメージング事業の業績貢献が大きかった。 地域別では、中国市場の落ち込みが続いている。ただ、期初の会社計画が保守的だったこともあり、4~6月期の中国売上の実績は野村想定をやや上回る着地となる企業も見られた(ヤマハの楽器事業や、カシオ計算機の時計事業の中国売上)。一方、流通在庫の調整があった北米の売上が想定を下回る企業が複数あった。年末商戦に向けては両地域の個人消費の動向が重要だが、先行きには不透明感が残るだろう。 人的資本および多様性は最近の注目テーマの1つであり、家電・精密各社では女性活躍の促進などが課題となっている。 例えば、ソニーグループは、取締役に占める女性比率が40%(10名中4名)だが、役員(上席役員+執行役員)に占める女性比率は12.5%(24名中3名)である。同社は取締役10名の内8名が社外取締役で、女性社外取締役を外部から登用することで監督機能における多様性を確保する狙いは評価できるが、執行機能における女性活躍は相対的に低い。また、グローバルな女性管理職比率は30.0%だが、海外のエンターテインメント系事業が比率を高めている面が強い。実際、国内の主要事業会社であるソニー株式会社では6.9%に留まっている。同社は有価証券報告書の中でも、「日本では、女性管理職比率が低く、教育課程において理工系分野を専攻する女性の数が限定的であることから、注力すべき領域」と説明している。 サステナビリティ関連の取り組みにも注目 9月14日、ソニーグループはサステナビリティ説明会を開催した。グローバルな社会課題への取り組み(新型コロナウイルス・ソニーグローバル支援基金など)、アクセシビリティ(視覚に障がいがあるユーザーの操作をアシストする機能を搭載したカメラなど)、インクルーシブな社会づくり(奨学生に対する支援など)、環境に関する取り組み(プラスチック包装材の廃止など)について紹介した。 前回(2022年9月)のサステナビリティ説明会では、AI(人工知能)の活用と責任についての説明があったが、今回はAIについてプレゼンの中では取り上げられなかった。過去1年で生成AI が急速に普及拡大し、ソニーグループを取り巻く事業環境も大きく変化している中で、AI について特段のアップデートが無かった点には違和感を覚えた。音楽業界における生成AIに対する著作権保護の問題や、映画業界でAI規制を求めるストライキが続いている問題に対して、当社のAI倫理委員会でどのような議論が行われているかなど、積極的に対外発信していく意義があると考える。 9月13~14日、パナソニック ホールディングスは技術展示会「Panasonic CorporateR&D Technology Forum」を開催した。基調講演で小川立夫CTO(最高技術責任者)は、注力領域であるグリーントランスフォーメーション(GX)とサイバーフィジカルシステム(CPS)が23.3期の研究開発投資の45%を占め、これを25.3期には70%に高めると説明した。展示会では環境関連の発表が特に充実していた。ペロブスカイト太陽電池ではガラス建材一体型、水素製造デバイスでは貴金属フリー陽極、全固体電池ではドローン等の超急速充電対応など、他社とは異なるアプローチで差異化を図っている。材料開発からソフトウェアまでコア技術が広範囲にわたっており、当社が事業ポートフォリオ見直しを進めていく中で、研究開発の対象分野の絞り込みや子会社との役割分担を適宜見直していくべきであろう。 23年3月、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は「削減貢献量」の策定・報告に関するガイドラインを発行した。社会への削減貢献インパクトの標準化に向け、各社が働きかけを続けてきた成果の一部と評価される。スコープ1~3と併せて削減貢献量が評価基準となることによって、環境関連の研究開発が企業価値の向上により結びつきやすくなっていくと考える。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 岡崎 優) ※野村週報 2023年10月2日号「産業界」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2023/10/03 08:29
【モーニングFINTOS!】米国株は景気よりも金利上昇を警戒(10/03)
海外市場の振り返り 米国では政府機関閉鎖を一旦免れる中、9月ISM製造業指数が49.0と市場予想(47.9)を上回り、前月(47.6)から改善するなど景気軟着陸の可能性を示唆する内容だったものの、米国株式市場は金利上昇を警戒し、まちまちの展開となりました。FRB高官から年内の追加利上げや政策金利高止まりを示唆する発言が相次いだこともあり、先物市場では11月FOMCの利上げを3分の1程度織り込み、米国10国債利回りは一時4.70%程度まで上昇し、今回の利上げ局面のピークを更新しました。米国の金利上昇を背景に為替市場ではドル全面高の展開となりましたが、為替介入への警戒もあり、ドル円レートは1ドル=150円手前の水準で推移しています。 相場の注目点 市場の関心は引き続き各国の金融政策に集まっています。米国では景気堅調を示唆する経済指標が政策金利高止まり観測を喚起、長期金利の上昇を経由して株安材料視されやすい状況が続いています。金利高止まり観測の緩和に向けてはインフレの鎮静化がポイントとなるだけに、今週末発表の雇用統計、来週発表予定の物価関連統計が注目を集めそうです。日銀は9月の決定会合で金融政策、フォワードガイダンス(政策運営指針)ともに据え置きました。ただし、昨日公表された主な意見では、物価基調の底堅さへの言及が増加、日銀内で出口議論が活発化し始めた様子が垣間見える内容でした。年末から来年初にかけて日銀の政策修正期待が根強く残存し、円安ドル高に対する一定の歯止めとなることが予想されます。 (投資情報部 尾畑 秀一 ) (注)データは日本時間2023年10月3日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【今週の米国株】「政府閉鎖回避」で株価下落は回避できたのか? (10/2) 【野村の投資判断】グロース株の全面復活はまだ先か ご投資にあたっての注意点
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2023/10/02 20:00
【今週の米国株】「政府閉鎖回避」で株価下落は回避できたのか? (10/2)
原油価格の上昇を背景としたインフレ懸念の再燃と、米長期金利(10年債利回り)の上昇が株式市場の重石となりました。また、UAW(全米自動車労組)によるストライキや、議会の2024年度予算審議が難航したことによる政府機関閉鎖のリスクも米景気への悪影響が懸念され、金利上昇の要因となりました。 複数の要因が重なり見通しづらい米国株式市場ですが、ここでは主要3指数の騰落を一つの示唆情報としたいと考えます。金利上昇が株価下押しの主因であれば、一般的に金利上昇に弱いとされるナスダック総合指数がもっとも大きな影響を受けるはずですが、先週はナスダック総合指数が小幅ながら上昇しています。一方、NYダウ指数は1%超下落しています。3指数の動向からは、市場は金利上昇よりも景気減速の方を懸念しているように見受けられます。 Point1. 市場の注目度が高い景気指標に注目 先週の懸念の一つとなっていた米政府機関の閉鎖は、米国時間の30日(土)深夜に土壇場で回避されました。仮に閉鎖となっていた場合、CPI(消費者物価指数)などの主要が遅延するリスクや景気そのものへの影響が懸念されましたが、これは回避されました。 改めて景気動向を示す指標に注目が集まります。2日(月)の9月ISM製造業景気指数、4日(水)の9月ISMサービス業景気指数、そして6日(金)の9月雇用統計と重要統計の発表が相次ぎます。また、FRB高官の発言機会も多くなるため、FRB関係者ら経済状況への認識も重要な判断要素となります。 Point2.政府閉鎖回避でも残る3つのリスク 政府機関閉鎖は一旦「つなぎ予算」の成立で回避されたものの、期限は11月17日(金)までと1ヵ月半しかありません。この点に関し、野村の吉本シニア・エコノミストは3つのリスクがあると指摘します。 除外されたウクライナ支援の予算が、11月の期限以降も計上されず国際情勢が不安定化するリスク11月までに暫定予算が成立せず、政府機関閉鎖となるリスク 今回のつなぎ予算を主導したマッカーシー下院議長(共和党)が共和党強硬派(いわゆるフリーダム・コーカス。保守的あるいはリバタリアン的(自由至上主義)な共和党下院議員によって成る議員連盟)により解任されるリスク 米株式市場には②がもっとも直接的なリスクとなります。もっとも、FRB(米連邦準備理事会)が10月31日(火)-11月1日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で当面の利上げ打ち止めを表明すれば、金利上昇圧力は緩和されます。仮に政府機関の閉鎖が11月18日(土)以降に発生しても11月3日(金)発表予定の10月雇用統計や11月14日(火)発表予定の10月CPI(消費者物価指数)には影響がないでしょう。 Point3. 頼みの綱「企業業績」の位置は 来週からは、米国企業の2023年7-9月期決算発表が始まります。決算発表前に、株価の位置を確認しておきましょう。 上記は、S&P500の株式益回り(A)と米長期金利(B)、両社の差である「イールドスプレッド」(B-A)を表示した図となります。 ※株式益回り…一株当たり純利益/株価(PERの逆数) イールドスプレッドが大きいほど(プラス幅が大きくなるほど)、債券に比べて株式が割高であること示し、逆に小さければ (マイナス幅が大きくほど) 債券に比べて株式が割安であることを示します。この図では、足元の株価にはITバブル期ほどの割高感はないものの、ITバブル崩壊後~リーマンショック直前までと同水準に到達しています。イールドスプレッドにおいて再び株価の割安度が高まるためには、①債券利回りが低下するか ②企業の利益が拡大するか ③株価が下落するか のいずれかしかないと考えられます。 ①債券利回りの低下はあるか 足元の米長期金利利回りは、政策金利の先行きに対する市場期待では説明できない「タームプレミアム」が拡大しており、長期金利の押し上げ要因となっています。野村の小清水ストラテジストは「財政赤字の拡大を受けて米国債が大幅に増発されていることが、米金利上昇に寄与している」と分析しています。 一方で「タームプレミアムが大幅なプラスの値にまで拡大、定着することは考えにくい。むしろ、先々で景気が減速し、利下げ期待が再度拡大すれば、たとえ利付債の発行額が大規模化していても、米長期金利が低下することも考え得る」と分析しています。足元で起きている自動車業界のストライキ、政府機関の閉鎖懸念は足元は株価にとって悪材料となっていますが、長期的には米景気の下押し要因であり、景気回復の鈍化による金利低下はありうると考えられます。 ②企業の利益拡大はあるか 企業業績については、足元で回復する兆候があります。 S&P500企業のリビジョンインデックスの動向 S&P500企業のリビジョン・インデックス(直近4週間にアナリストが業績予想を上方修正した銘柄数/下方修正した銘柄数)は、決算期前に低下する傾向があります。しかし、その低下幅は、ここ数四半期で切り上がってきているように見受けられます。 また、同指数の四半期EPS(一株当たり利益)前年比増減比率で見ても、4-6月期決算を底として、7-9月期決算は前年同期比プラスマイナス0近傍まで回復し、10-12月期以降は増益基調に転じると予想されています。 回復基調が鮮明となれば、企業利益の拡大が株価の追い風となる可能性があるでしょう。 裏を返せば、米長期金利が低下せず、企業の利益が拡大しない状態が続けば、市場は株価下落で反応することが想定されます。今週は米長期金利動向に、来週からは企業決算動向に注目して投資判断をしたいと考えます。 来週は、10日(火)には飲料のペプシコ(PEP)が、12日(木)には空運大手のデルタ航空(DAL)が、13日(金)にはシティグループ(C)やJPモルガン・チェース(JPM)などの金融大手が発表を予定しています。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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2023/10/02 15:59
【イブニングFINTOS!】日経平均株価一時543円高の後失速し、大引けは97円安(10/2)
本日の株式市場 懸念されていた米国の政府閉鎖が回避された事が好感され、本日の日経平均株価は、前週末比244円高の32,101円と、3営業日ぶりに反発して取引を開始しました。寄付き前に発表された日銀短観で企業業績の改善が示された事も追い風となり、日経平均株価は、一時前週末比543円高の32,401円まで上げ幅を拡大しました。一方で、時間外の取引で米国の長期金利は4.6%を上回っており、日本の10年国債利回りも0.775%と、2013年9月以来およそ10年ぶりの高水準をつけました。日米の長期金利上昇が株価の上値を重くし、日経平均株価は上げ幅を縮め、後場中ごろには下げに転じました。引けにかけては下げ幅を広げ、結局前週末比97円安の31,759円と本日の安値で、3営業日続落して取引を終えました。 東証33業種別では、8業種の上昇に対して25業種が下落と、下落業種優勢となるなかで、長期金利の上昇が業績改善につながる銀行業は前週末比+1.25%と逆行高し、下値を支えました。 本日発表予定の海外経済指標等 【米国】・9月ISM製造業景気指数 前月:47.6 予想:47.9 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2023/10/02 15:30
【資産管理の視点】金融データサイエンス入門
2006年の時点で、Netflixはオンラインで注文を受けてDVDの貸し出しを行う企業にすぎなかった。同社は顧客に対して、新しく借りてくれそうなDVDを推奨するアルゴリズムを使っていたが、大量の顧客行動データを上手く活用しきれていないと考え、このアルゴリズムの改良案の公募(コンテスト)を開始した。毎年の成績トップには5万ドル、初めて10%改良すれば100万ドルの賞金を支払うことにした。この発表を受けて、我こそはと考えた優秀(だがお金のない)プログラマーたちが次々にコンテストに参加した。結果は大成功で、翌07年には早速、成績トップのチームが7%の改良を実現したという。 これはデータサイエンスの時代の典型的な成功例で、特に「パーソナライゼーション」が使われている。「パーソナライゼーション」で、スマホのアプリも個人の年齢・性別・趣味嗜好に基づいて表示を変えることができる。「個人個人で異なるソリューションを提供するためのフレームワーク」ととらえると、行政サービスの制度設計や民間企業のマーケティング・ポイント付与・料金設定も応用分野に含まれる。 日本証券アナリスト協会の月刊誌「証券アナリストジャーナル」では、この23年7月から11月の間、「金融データサイエンス入門」シリーズとして、各回異なる識者から見た金融データサイエンスの論点を解説している。そこで頻繁に表れるのが、パーソナライゼーションの先にある社会全体の分析や考察である。個人や企業を点とし、多くの点を繋げた巨大なネットワークを扱い、そこでは人や企業の近さ(距離)、クラスター(やハブ)と言った特有の考え方が現れる。第3回を執筆されたマネーフォワードの瀧 俊雄氏は金融サービスの将来を占う上で、考えを社会全体の繋がりに進め、金融サービスの「大衆化」を軸にした議論を進めている。 “Connecting the dots”はSteve Jobsがスタンフォード大学の卒業式スピーチで使った言葉で、「人生の一見バラバラな様々な出来事(点)は、実は繋がっていて全体(ネットワーク)を形作っている」としている。データサイエンスの伝導者の言葉として見直せば深い含意が感じられる。今後もデータサイエンスは、社会ネットワークの質を高めていくだろう。 (野村證券クオンツ・ソリューション・リサーチ部 大庭 昭彦) ※野村週報 2023年10月2日号「資産管理」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2023/10/02 09:30
【銘柄紹介】住友ベークライト/栗田工業/三井不動産
住友ベークライト(4203) 化学 半導体封止材で世界シェア首位 当社は日本で初めてプラスチックを製造したパイオニアであり、現在は半導体・自動車・医療など様々な用途市場へプラスチック特性を活かした製品を展開する。特に半導体を外部の熱や衝撃から保護する封止材では約4割の世界シェアを誇るトップメーカーである。過去には半導体の小型化・薄型化により封止材の使用量に減少傾向が見られた時期もあったが、近年では半導体小型化の傾向が一巡したうえに、今後は自動車向けの販売拡大が見込める局面にあると考える。自動車向けでは車載半導体の封止材に加え、自動車部品の封止に用いられるモビリティ戦略製品の販売拡大など、封止材の用途拡大も増収に寄与しよう。 EV向けで封止材の用途拡大が進む モビリティ戦略製品は既存の車載半導体向けと異なり、新規用途である自動車部品の封止に用いられる。具体的にはEV(電気自動車)向けのモーター磁石固定用、ステーター用の封止材などであり、EV の生産台数増加に伴って販売が拡大すると見込む。中期的にはスマートフォン・PCなどの情報通信向けと比較して需要変動が小さい自動車向けの売上構成比が上昇することで、業績の安定性が高まる点も評価している。短期的にも封止材の在庫調整が一巡しており、2023年4~6月期決算では循環的な需要変動の底打ちが確認された。封止材の需要回復により、24.3期の事業利益は前期比18%の増益を見込む。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 番 大輝) 栗田工業(6370) 機械 新しい中期経営計画がスタート 当社は2024.3期より新しい中期経営計画(24.3期から28.3期)がスタートし、それに合わせて事業区分を水処理薬品事業と水処理装置事業から電子市場と一般水処理市場へ変更した。28.3期に売上4,500億円、事業利益率16 %(720億円)を目標とし、23.3期末を起点に年率換算すると5%増収、13%増益となる。事業別では、電子市場が年率7%増収、14%増益、一般水処理市場が同4%増収、12%増益となる。また、環境関連のCSV(共通価値の創造)ビジネスは、24.3期に500億円、28.3期に1,000億円(電子市場200億円、一般水処理市場800億円)を計画し、主に一般水処理市場での拡大を見込む。 24.3期下期から事業利益率が改善 24.3期では電子市場の装置事業で受注した低採算案件が売上計上されることに加えて、半導体産業の生産調整を背景とした精密洗浄事業の鈍化もあることから、事業利益は前期比4%増の403億円と小幅増を見込む。ただし、低採算案件の売上計上は24.3期上期に集中し、下期からその影響が剥落することから、事業利益率の改善が見込まれる。 25.3期では前期に計上された低採算案件の反動、半導体市況の回復に伴う精密洗浄事業の回復、採算性が高いCSVビジネスの拡大が寄与し、同17%増益の470億円を見込む。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 王 博瓊) 三井不動産(8801) 不動産 年率7%の利益成長を実現 ビル・住宅・ショッピングセンターなどの複合的な街づくりを得意とする日本の大手総合不動産デベロッパー。物流施設やホテル・レジャー事業の他、海外における不動産開発事業も積極化している。 2024.3期は、ホテル・レジャー施設事業の回復に加え、前期に竣工した超高層大型ビルの「東京ミッドタウン八重洲」や米国の「50 Hudson Yards」が業績貢献を始めよう。米金利上昇の影響で経常利益は減益を予想するが、投資株式や賃貸不動産の売却を戦略的に行い会社が目標とする親会社株主利益の年率7%の利益成長は確保できると考える。野村では、親会社株主利益は前期比14%増益を予想する。 総還元性向は45% 日本の不動産株への関心が高まりつつある。金融政策は徐々に引き締め方向へ変更されているが、金融緩和政策は続く見通しである上に、オフィス賃貸需要が強く、オフィス空室率が改善するという見方が強まっているためである。更に、アジア主要都市の中で東京の不動産投資への優位性が見直されている。当社が首都圏で保有するビルの空室率は3%台と低位で、不動産の売却事業も良好に推移するだろう。 豊富にある開発パイプラインと不動産の含み益を戦略的・継続的に顕在化させることで年率7%の利益成長を実現しつつ、総還元性向45%を公約している。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 福島 大輔) ※野村週報 2023年10月2日号「銘柄研究」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2023/10/02 08:38
【モーニングFINTOS!】29日NYダウ下落も週末米政府閉鎖回避報道(10/02)
海外市場の振り返り 米国で発表された経済指標は、8月個人消費支出は前月比+0.4%と、市場予想の同+0.5%を若干下回り、注目されていた個人消費支出デフレーターのコアは前月比+0.1%と市場予想の同+0.2%を下回りました。ミシガン大学消費者信頼感指数の9月確報値は68.1と、市場予想の67.7を上回りました。NY連銀のウィリアムズ総裁の講演要旨が公表され、政策金利の誘導目標レンジは、ピークかそれに近い水準にあり、しばらくの間、景気抑制的な金融政策姿勢を維持する必要があると述べられています。利上げは終了した可能性があるとの見方が示されていると、市場では見られているようです。米国株市場は、米政府閉鎖リスクを前に方向感が出にくくなる中で、米国景気減速や原油価格の下落により金利は落ち着くとの見方から、NYダウは下落したものの、テクノロジー株中心に小幅高となりました。 相場の注目点 UAW(全米自動車労組)はGMとフォードに対するストライキを拡大する見通しを示しました。一方、米議会は10月1日午前0時の期限前に、暫定予算を成立させ、政府閉鎖にならないことが確定しました。11月17日までの予算となります。米国の政府閉鎖が回避されたことは、日本株市場においても不透明材料の後退として下支え要因になるとみられます。 本日のイベント 8:50に日銀短観が発表され、海外では、ノーベル生理学・医学賞が発表されます。米国はISM製造業景気指数の発表と、パウエルFRB議長、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁らの講演があります。 (投資情報部 小髙 貴久) (注)データは日本時間2023年10月2日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【10月の投資戦略】世界的な調整局面は反転に向かうとみる 【業界展望】訪日外国人の購買力上昇と回復が進む航空業界 ご投資にあたっての注意点
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2023/10/01 19:00
【10月の投資戦略】世界的な調整局面は反転に向かうとみる
結論:米国の利上げは年内終了が明確となり世界的な調整局面は反転へ。金利は落ち着き、業績拡大が株価を支援するとみる 目次・いずれ米国の利上げ局面は終了・米国経済の成長が続く・米国テクノロジー企業の業績拡大・テクノロジー産業は調整から復調へ・日本では生産財に好転の兆し・日本企業の業績は上方修正へ いずれ米国の利上げ局面は終了 米国では、FRBの金融引き締め姿勢が長期化するとの見方から、長期金利が上昇し、株価の上値が重くなっています。我々は、米国の利上げ終了は大きな転換点となり、インフレの低下が確認され、企業業績の底打ちが視野に入れば、株価の復調は明確になるとみてきました。FRBがインフレへの警戒を解くには時間がかかるでしょうが、業績の増益復帰の確度が高まりつつあり、次の決算シーズンで業績拡大が確認されれば、株価の追い風になるとみられます。 ▲TOPに戻る 米国経済の成長が続く 米国の成長率見通しに対する市場予想の上方修正が続き、景気後退予想はほぼ見られなくなりました。商業用不動産市場の低迷は、大手銀行への深刻な影響にはならないとみます。コロナ禍で始まった学生ローンの救済措置の失効や、住宅ローン金利の再上昇は、個人消費や住宅投資の重石となりますが、良好な雇用環境は維持されており、景気を下支えするとみられます。産油国の減産により原油価格は上昇していますが、天然ガス価格は落ち着いており、米国のCPIコア(消費者物価除く食品・エネルギー)の上昇率は緩やかな減速が続いています。 ▲TOPに戻る 米国テクノロジー企業の業績拡大 9月に公表されたFRBのドットチャートでは、2023年内に1回の追加利上げと、2024年はそこから2回の利下げの予想が示されました。市場の過度な金融緩和期待が高まるのを防ぐ効果とともに、長期金利の上昇を誘発しています。一方、企業の業績見通しについては、テクノロジー企業を中心に業績の拡大が予想されており、米国株式市場の支援材料となっています。 ▲TOPに戻る テクノロジー産業は調整から復調へ ユーロ圏経済は、外需の弱さなどから景気後退懸念が強まっています。インフレ抑制の焦点は利上げ幅から、高い政策金利維持の期間へと移っています。中国経済は、失業率の上昇や不動産開発企業の経営難など、様々な問題を抱えています。中国政府は金融緩和や住宅関連支援策など、矢継ぎ早に政策支援を発表しています。一方、中国の在庫調整は進展し、テクノロジー製品の中核となる半導体市場は、世界的に反転拡大へ向かいつつあります。 ▲TOPに戻る 日本では生産財に好転の兆し 日本では、自動車の輸出は好調ですが、製造業全般に挽回生産の加速局面は一巡しています。一方、生産財は在庫調整が進展するなど、好転の兆しがみられます。交易条件の改善は製造業の収益拡大要因で、円安はインバウンド需要を増加させています。名目賃金の上昇に対し、インフレを差し引いた実質賃金は2%近くのマイナスです。賃上げ圧力は強く、政府は賃上げや投資促進、物価高対策などを想定した経済対策を10月中に策定する予定です。 ▲TOPに戻る 日本企業の業績は上方修正へ 銀行貸出しは、貸出利率を高めつつ伸びも加速しています。長期金利は緩やかに上昇し、日銀は経済指標を確認しつつ、異例の金融緩和策終了の条件が整うのを見極める段階です。ただし、相対的には米日金利差は拡大し、円安が進んでいます。為替介入が警戒されるものの、円安は製造業を中心に業績の追い風となり、良好な経済環境の下で企業業績は上方修正に転じています。野村證券は2023年末の日経平均株価の見通しを34,000円と予想します。 ▲TOPに戻る (野村證券投資情報部 小髙 貴久) ※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 10月号」(発行日:2023年9月25日)「投資戦略の概要」より 業種分類、Nomura21 Globalについて ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/10/01 13:00
【注目トピック】東証要請を検証、開示が進む企業/進まない企業の特徴は
東証要請 企業の取り組み状況を検証 3月以降の状況整理 2023年3月、東証は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を発表しました。 これを受け、株式市場では低PBR(株価純資産倍率)企業が多い状態が是正されるとの期待感が高まりました。その後、日経平均株価は2023年6月に33年ぶりとなる33,000円台を回復しましたが、PBRの上昇による部分は限定的です。更に2022年度決算では、増益となり、総還元性向が上昇したにも関わらずROE(自己資本利益率)は9.8%と、2021年度の10.1%から低下しています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 東証要請を踏まえた企業の開示状況 2023年3月に発表された東証の要請を受けて、2022年度決算発表時には、多くの企業が増配や自社株買い枠を設定するなど、資本効率向上を意識した発表が相次ぎました。 今般の要請では、計画策定や開示の前提として十分な現状分析や検討が求められるため、開示時期に関して具体的な期限を定めていないものの、東証による2023年7月14日時点の集計では、プライム市場に上場する20%(242社)の企業が自社の取り組み等を開示、11%(137社)が検討中と開示しています。 取り組み等を開示している242社を見ると、開示を行っている主な書類は、中期経営計画が33%と最も多く、次いで決算説明資料が29%となっています。 PBRと時価総額水準別開示状況 PBRと時価総額水準別の開示状況を見ると、PBRが低く、かつ時価総額が大きい企業ほど開示が進展しています。プライム市場に上場しているPBR1倍未満、かつ時価総額1,000億円以上の企業では、45%の企業が取り組み等について、何らかの開示を行っています。一方で、PBRが高く、かつ時価総額が小さい企業では、相対的に開示が進んでいない状況です。 業種別の開示状況では、平均PBRが低い業種の方が開示が進展しており、銀行業では検討中と開示している企業を含め、約7割が開示を行っています。一方で、平均PBRが高い情報・通信業、サービス業、小売業などでは、相対的に開示が進んでいない状況です。 今後の東証フォローアップと想定される企業行動とは 東証によると、今般の要請および企業の対応状況について、投資者からは、要請を踏まえた企業の変化について、高い期待を寄せる声が多い一方で、依然として経営者が取り組みの意義・必要性を十分に理解していないケースや、危機感はあっても対応を進める知見やリソースが十分ではないケースが見られるとの指摘などが挙げられています。 東証は今後、既にPBRが高い企業も含めて、改めて適正な開示の取り組み等を求めるとともに、投資者の視点を踏まえた対応のポイントを周知する方向です。こうした動きを受けて、今後は資本効率向上を意識した経営を行う企業とそうでない企業とで、株式市場での評価の格差拡大が予想されます。 中間決算発表時には、持続的な資本効率向上に欠かせない適切な事業ポートフォリオの構築など、WACC(加重平均資本コスト)やROIC(投下資本利益率)を意識した経営を志向する旨を表明する企業が増えるとみられます。 (野村證券投資情報部 寺田 絢子) 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点